十月五日土曜日 二十三時。
 二度目の悲鳴は、自分の目の前に舞い降りた。


「こっち、早く……!!」
「ま、待って……!!」
 ハァハァハァハァ。
 疲れた。息がしずらい。胸が苦しい。
 窓から射し込む月明かりがウザったい。
 自分はもう一人の手を引いて、物影に隠れる。
 
 ……が、それが間違いだった。

 ウザったい月明かりが途端に遮られる。
 それと共に絶望が身体中を駆け巡った。
 ───一瞬の事だった。
 一瞬の事。自分の手を握っていた人物が床に倒れた。
 それと共に、月明かりに照らされて光る瞳が、ギロ、っと自分を見ているのがわかった。
 目の前で赤色の液体が宙を舞う。
 そして、自分の糸をプツン、と切った────。

       * * *
 
「こっち来んな、ヘタレ!!」
 三年一組の教室には、今日も罵声が飛ぶ。
「一人にならない方がいいって……。夜中に、危ないだろ?」
 ビクビクしながら話す彼は、毎度毎度説得力がない。
「うるさいなぁ!じゃあ何?!陽菜があんたと一緒にいたら、絶対あんたが守ってくれるわけ?!」
「それは……、」
 う、と口を噤む彼。こんな肝心なところで口を噤むからヘタレなのよ。
「出来もしないこと言わないでよ、このヘタレ!!」
 そう言って、私は扉を勢いよく開けて、教室から出ていった。
 智ってば、ほんとにウザイ、しつこい!!
 未練ありすぎでしょ……!!
 (陽菜)は、月明かりだけが頼りの廊下を渡る。
 真っ暗。隣の教室を覗いても、何も見えない程に。でも、もう慣れた。
 なんで私が智と同じ待機場所なのよ。数日前に別れたばっかでしょ!
 考えれば考える程、イライラしてくる……!!
 ……なんで私、あんな奴に惚れたんだろ、……。いや違う。向こうが勝手に惚れてきただけ。私はただ……、付き合ってやってただけ。
 そう、最初から……本気じゃなかったし。



『好きです、付き合ってください!!』
『……は、?』

 私の周りに群がるクズの中から、光が見えた気がした。嘘コクとか、遊んでは捨てて行く男共のなかで、唯一、一人だけ。
 流暢に手を差し伸べて、キラキラした目で私を追って。
 ……その手を握ったのは、あの時に限って、疲れてただけだし。



 ……って、何考えてるんだろ。あいつはもういい。
 早く新しい待機場所を見つけて……。
 そんなこと思いながら、廊下を渡っている時。視界の端で動く人影を目にした。
 はぁ、またウジウジした智が着いてきやがったのかしら。
 そう思い、人影に焦点を合わせる。
 ……────は?いや、そんなわけないじゃん。だって……。
 その人影は、智の居た三年一組の教室とは正反対の方向。私と対面する場所から出てくるわけない。
「え、」
 誰……?誰なの?
 こんな真夜中に、どうして人が廊下を歩いてんのよ……。竜也と夏音がいる音楽室も反対側だ。
 一歩、後ろに後ずさりする。そして、後悔した。
 ザリ、と音が鳴ると共に、人影の目がギロ、っとこちらを向いた。
 バッチリと目が合う。
 黒い物体はこちらにゆっくりと近づいてくる。
──────やばい。
 手に何か持っているのも見える。月明かりによってキラン、と鉄の輝きが一瞬見える。
いやだいやだいやだいやだいやだ───────
 その瞬間、私はその場を駆け出した。

うそだうそだうそだうそだうそだうそだ……ッ、!!

 着いてくる足音は、一向に……
     離れる気配がなかった────────。









『──────え……?今、なんて……、』
『だから、別にお前のこと本気で見た事ねぇって。』
 人気の無くなった学校の廊下、放課後に告げられた一言。
 恋心を覗かせていた男は、目の前でタバコを吸っていた。高一には似合わない臭いが漂う。
 
あの時、一生唇が震えていたのを覚えてる。

『どうして……?陽菜、和樹くんのこと……』
『あー、めんどくせぇ。なんつったらいいかな。……アー、アレだ。レンタル彼女的な?』
『……。』

綻びのある心が、一瞬にして崩れたのも覚えてる。

彼が向けた、最後の一言。タバコの混じるあの息を。

『潮時だな、お前。本当───────都合のいい女。』

痛いくらいに、覚えてる────────。







 ハァハァハァ。
 息が荒れてる。苦しい。バレる。
 必死に荒れている息を無理やり押さえ込んだ。

『あの日から、生きる意味が分からなかった。』

 何なのあいつ、ずっと追ってくるんだけど……!!
 嘘、まさかマーダー……?
 その予想が頭に過ぎった時、1つの希望が見えた。
     『それでも、死ぬのは怖くて、』
 自己防衛で処刑すれば勝ち……?
      『どうにかして生きたくて、』
 私、これ勝てるんじゃない……、?
       『しつこくこの世界にしがみついてた。』
 だって、自己申告したらいいんでしょ……?
 私は、静かに図書室へ逃げ込み、掃除ロッカーを開けた。

『がむしゃらに抗う方法は、また─────』
    『愛を見つけることだけだった。』

 刃物はない。殺るとしたら、箒で叩き潰すのみ。
 静かに、それでも出来るだけ早く、私は箒を取り出した。

……人を殺す。

 その瞬間、心臓が握り潰されるような感覚が私を襲った。一筋の汗が流れる。
 それと共に、箒を握る手が湿っていく。
 生きるためには、そうするしかないんだ。
 私は、箒を手に持って、扉の後ろに立った。

『……それでも、あの日常が変わる事はなかった。』

 息がまだ荒れている。……疲れているせいじゃない。

『レンタル彼女として、一生彷徨い続けるだけ。』

 心臓がドクドクとうるさいのもそのせいじゃない。
 カチャ、と箒を構え直すことで、金具の音が鳴った。
「…─────みぃつけた。」

『あぁ──────……死にたいかも。』


       * * *

 愛が欲しい。いや……愛なんて傲慢なものはいらない。
 温かなものが欲しい。癒して欲しい。
『どうして……、?なんでっ……陽菜は……ッ。』
 願いが大きくなっていけば行くほど、体は冷たく凍っていく。
 どうすれば、冷たい心が溶かされるんだろう。
 わかんないッ。もう……わかんないよッ……。
 常に周りは盲目で、真っ暗で何も見えなかった。
 暗闇から出てきた手をひたすら手に取って、すぐ振り払われて、その繰り返しで。……でも。
 ある時、この差し出された手は、絶対とっちゃダメなんだと思った。
 今までとは比にならない程、得体の知れない何か。
 ……これだけはダメだ。この手はダメだ。この手を取れば、もう戻れないと、瞬時に理解した。
 ───────本能では。
 私の手は言うことを聞かなかった。差し出された異様な空気を纏う手に、指を近づけていた。
 ダメ、ダメ。

だめだめだめだめだめだめだめだめ───────、

 だめっ……、

『─────だめだよ。そっちに行っちゃだめ。』
 
 寸前、後ろから私の腕を掴んだ手は、か弱くて一瞬で振り払えそうで、綺麗で優しくて──────純白だった。





 
 突如、引っ張られ、お腹に回された腕に既視感を感じる。
 弱々しく細いのに、思いのほかゴツゴツしている。
「さ、智……?」
 私よりも息が荒れている智だった。
「よ、よかった……。」
 くて、とその場にもたれかかる。
 この見つかる一瞬で、智に手を引かれ、カウンターの下へ隠れた。
「なんで智が……」
「……。」
 何よこいつ、私の方が焦ってるでしょ、普通。
 なんであんたが……、そんな私よりも息荒れて……
「……何も無くてよかった。」
 力なく言葉にした智は、静かに私の腰に手を回して、頭を胸に填めた。次第に、しゃくりを上げる声も聞こえてくる。
 声が震えてる。なによ、あんた……。
「陽菜が教室から出てった後、駆け出す音が聞こえたんだ。……間に合ってよかった。」
 鬱陶しい彼の腕を私は振り払う。
 ……ことは出来なかった。
 力が強いからじゃない。ましてや、逆に一瞬で振り払えそうな程弱々しかった。
「っ……。……、ごめん、」
 その一言だけは言おうと思った。
 鬱陶しいはずの男なのに。めんどくさいはずの男なのに。ヘタレなはずの男なのに。
 ……元カレのはずなのに。
 なんでそこまで元カノを必死こいて守ってんのよ。
 ……なんなのよあんた……。
「とりあえず教室に戻ろう、陽菜。」
 な?と本気で説得するように智は私の肩を強く掴む。
 初めて思った。智の言葉に従おうと思ったこと。掴まれる肩が、こんなにも痛くて、……優しいだなんて。





 手を握られたのは初めてだった。
 力強く強引に、汚い手とは違って、優しくて、私を認めてくれて。
 振り払ったこともあった。
 優しい手は、慣れてない。楽しくなかったと言えば楽しくなかった。面白味のない手。
 けれど、彼は私の手を再び握ろうとはしなかった。私の前に立って、ずっと側に居て歩いてくれた。
 物足りなくて、少しお節介な手。温かくて、優しくて、凍った心が本当に絆されていくような手。
 けれど、その手は確かに愛を感じた。
      この人なら───────────……




「……。」
 私は、彼の顔を見ることは出来ず、小さく頷くだけだった。

『もしかしたら、本当の愛を私に───────』

 けれど、そんな私を見て安堵した智は、微笑んで私の肩を支えてくれた。


   「愛し合ってるんだねー。」(『夢を見るなよ。気持ち悪い。』)
 

 その声が聞こえた瞬間、私は血相を変えて智の手を引き、走り出した。

       * * *

「こっち、早く……!!」
「ま、待って……!!」
 永遠と着いてくる足音は、私たちの恐怖をさらに倍増させた。
 あの声、どこか既視感があった。誰の声、誰の声だ?分からない。分からないけど……



『君は……、誰……?』
『誰とかどうでもいいでしょ?気持ち悪いって言ってんの。』



「智、処刑するのよ、処刑!!こんな事態に、人殺しとか言ってる場合じゃないよ!」
 私は、できるだけ小さい声で智へ張り上げた。
「待てって!」
「何か、殺せるもの……!」
 私は辺りを見渡した。



『君はあの時、掴まれた手を素直に受け取ってたけど、あの時から既に、もう手遅れなんだよ。』
『あの時……、もう、手遅れ……?』
『もう、戻れない。素直な恋なんか────似合わない。』



 消化器?いや、取り出すのに時間がかかる。
 さすまた?どうやって殺すって言うんだ。
 どうすれば、なにすれば……
「陽菜!!」
「っ……!!」
 智は私の手を振り払った。しかし、足は止めなかった。
「処刑はできない……」
 歯を食いしばりながら放つ一言は、到底納得できるものではなかった。
「何今更怖気付いてんのよ、このヘタレ!」
 やっぱりヘタレだ。何よ、見直す事なんて百年ないわ!
「できないんだよ、校庭のモニター見てみろよ!!」
 私は、その一言で窓から校庭をみる。

【処刑:実行済み】
 
「は……?」
「あの時の犯行は……、処刑だったんだ……!!!」
 嘘でしょ。どういうことよ。
──────あの時?
 もう、訳分からない。
「とりあえずこっちだ!!」
 そう言って、ぐい、っと曲がり角の暗闇に私の手を引っ張った。
 情報が多すぎて頭がパンクしそう。何も処理しきれない。
 荒れ果てる息を押し殺して息を潜める私達。
 生きたい。ムリだよ、死ぬなんて嫌だ……ッ。



『何人の男と遊んできた?』
『そ、れは……。』
『増してや、捨てられて来た側が。最終的に、自分から相手を切り捨てることすら覚えたくせに。』
『ちがう……ッ!!!』
『ちがう?──────何がちがうの?』
『ッ……。』




過ぎ去るのは一瞬だった。
 突如私たちを照らしていた月明かりが遮られて顔を上げる。顔を上げるとそこに居たのは……マーダーだった。
 私に対して振り上げられるナイフは、隙間から射す月明かりによって光っていた。微かに鉄の匂いがしたのは、覚悟した後。
 目の前のことを瞬時に理解すると、私はそっと目を閉じた。
 マーダーが殺せるのは週に一回。私が殺られれば……、

智は殺されないんだ。

 後ろで、怯え、震え上がる智の息が聞こえる。
 あぁ、ほんと私、何考えてんだろ。こんなヘタレのために今、死を覚悟して目を瞑るとか、ヘタレの為に代わりに殺されようとか……、ほんとアホらしい。
 …─────結局は自己満足よね。
 風を斬る音が瞬時に聞こえた。

「──────────……。」

 ……それだけだった。風を斬る音。ただそれだけが聞こえた。
 目を開けると、そこには赤色の液体が宙を舞っていた。その液体の奥に見える光景。
 遠のいていた聴覚に突き刺さるのは、乾いた細い悲鳴だけ。
「ぅぁ、ぁ"……。」
「……さと、る──────────……?」


『お前に。智を、人を、愛する権利なんかないんだよ。』


「智……?」
 頼りない、細い智の背中が見える。
 そして、その頼りない背中は無惨にも床へと倒れ込んだ。
「智……、智……ッ?」
 私は恐怖の根源を前に、智の肩を抱き寄せた。

『愛の答えなんか、一生見つかりっこないんだよ。』

「智……ッ!!」
 グルン、と体を回転させて智の顔を見る。
 飛び血で顔が汚れている。もう、息はしていなかった。
「智、智!!いやだ……、起きてよ、ねぇ!!どうして……ッ、」
 肩を揺すっても反応はなかった。当たり前だ。……刺されて死んでいるのだから。
「ねぇ、起きてったら、!ヘタレ、起きなさいよ!守ってみせるんでしょ、私の事!!言ったでしょ……!!一丁前に格好つけといて……、そうやってすぐに裏切るなッ!!」
 智の手を握っても、もう智の体温を感じることはできなかった。さっきまでは温かかったのに。
「……高橋 陽菜。」
「っぁ……。」
 恐怖の根源がしゃべり出した。おぞましい声が私を恐怖へと陥れる。
 恐怖と共に声にならない悲鳴をあげる。
「智の事嫌いだったんでしょ?なのにどうしてそんなに悲しんでんの?なんでそんなに、泣いてるの?ねぇ。」
 ゆっくりと私は恐怖の根源を目で瞠った。
 相手の視線が鋭く突き刺さる。
 あんただったのね……、
「許さない……」
「許さない?これはゲームだよ。負けるからっていじけるなよ」
 腹立だしい。そうだ、これはゲームだ。
 ……ゲーム?
「どうして愛されてたのにあんたは避けたの?後悔することも知らないで。身をもってあんたを守ってあげるほどに、芭田 智はあんたを愛してた。(『その癖お前は?』)
「やめて……」
「結局は、ガチ恋する自分が認められなくて、本能的に避けてたんでしょ」
「やめてよ……。」

『「自分の為だけに行動して、智を苦しめて、結局は自分も苦しんで。それで、智が死んだら悲劇のヒロインぶって?本当に呆れる。」』

「いやだ……」
 どんどん詰め寄ってくる恐怖の根源。
 来るな、来るな。
 私は智を抱いたまま、できる限り後ろに下がった。
「まぁいいや。そうやって一生悲劇のヒロインぶってなよ。一緒にいかせてあげる。」
 に、っと笑うと共に歯が見えた。
 あぁ、やばい。今から私は智と同じように……
「っ……。」
 
 殺されない。

 私は、耐え切れずふっと声を漏らした。
「っ?」
「はは……、バッカじゃないのあんた。」
 奴は怪訝そうに、振り掲げたナイフをピタリと止めた。
「ルール説明、マーダーになった衝撃で見てなかった?週に一回しか殺せないのよ。マーダーの殺人条件……ッ。だからあんたは……、私を殺せないッ!!!」
 キッと睨みつけた恐怖の根源は、もう恐怖の根源では無かった。ただの裏切り者だ。
 ハッとした顔を見せる裏切り者。計算間違えたでしょ、甘く見ないでよね。
 このまま音楽室へ逃げ込めば勝てそう。
 今がきっとチャンスだ。
 そう思い、右手に力を入れた。その時だった。
「あはは」
 裏切り者の口元が今にも裂けそうなほどニィと笑った。
 気味の悪い笑みは、私の頭を混乱させた。
「なによ……」
「あっははははは。……っはー。ねぇ、陽菜。」
 裏切り者は振り上げていたナイフを腰に戻した。
 何をしようとして……
 それと共に、ポケットから何やらスマホを取りだした。
 なにやってんの。連絡?いや、ここ圏外だよ?
「今、何曜日の何時か分かる?」
「は?」
 急に正気を取り戻したかのようにポチポチスマホを触りだす裏切り者。
「そんなの、分かるわけないでしょ……。」
 こんな謎の異空間に何日も閉じ込められて、日付感覚狂うに決まってるでしょ。なんのメディアにも触れることができないのに。
 そう言うと、裏切り者は触っていたスマホ画面を突然私の元へ向けた。
 急なブルーライトに目が眩む。
 薄く閉じた目を開いて、内容を確認した。
 なにこれ。ただのホーム画面……
 
【10月6日 "日曜日" 0時02分】

 その画面を見た瞬間、私は瞬時に理解した。
「新しい一週間の始まりって何曜日からだったっけ?……──────日付。回ってるんだよ?」
 ニコッと微笑む裏切り者は差も計画的、と言わんばかりに満面の笑みをしてナイフを振り上げた。
 向けられたスマホ画面には、絶望に満ち溢れた私の顔が反射した。
 涙でぐしゃぐしゃ。その膝には智が寝ている(死んでいる)




『お前に、権利なんかないんだよ。だからお前の気持ちは偽物。本当は、智へ愛なんか向けれない。お前は智のことを好きになれない。これまでも、……これからも。ずっと───────』
『────────ううん。私、智の事が好きだよ。』
『それも偽物。』
『好きに気づいちゃったんだよ。』
『っ……。』
『智のお節介が好きで、あのかっこ悪い弱虫も好きで、』

……好きで好きで、たまらないんだと思う。
            だって───────……




 裏切り者は、何処までも何時までも、恐怖の根源には変わりなかった。

『だって、ここまで相手を理由に泣いた事なんかないんだもん……っ。』

 異様な程に練られた繊密な殺人計画。
 何事にも動じない無敵の精神力。
 いつもとは違う顔。
 あぁ、こりゃあみんな騙されちゃうな、
 …───────私達みたいに……。



『苦しかったよね。答えを探してるのに、答えを見つけるのが怖くて。本能的に避けて。』
『っ……。』
『でも、もう大丈夫。苦しいのも全部、陽菜だから。陽菜は……愛を知れたから。……──────"苦しい陽菜"も愛してあげる。』


  
  十月六日 日曜日 0時。
 
 三度目の悲鳴は、私自身の声になった。

 みんな、あとは頑張って。私は、……みんなが気づく最後の最後まで抗っておくから。