待て。待つんだ。行ってはいけない。
今行けばお前は─────……
昇降口の扉を勢いよく開けて、廊下に飛び出す一人の少年。
上からは、天井を伝って屋上へ向かう足音が、体の隅々から感じ取れた。
全身に脈立つ鼓動がどんどん速度を上げていく。走っているからでは無い。いや、正確には走っているのもあるだろうけど。
事の重大さを理解した脳から胸へ、渦を巻くようにドス黒い不安、恐怖、後悔、焦り。
全てがごちゃまぜになった、表しようのない感情が胸を占領する。
良く考えればわかったことじゃないか。
『血が滲んでるけど……。』
『違う……、私じゃない……。』
『これって、この前見た───と同じ……ッ』
『こっちに来て────……』
『俺は……お前を信じるぞ。』
『生きる道を選んで、何が悪い!!』
『因縁をこじつけないでよ、どうせあんたなんでしょう?!』
全ての発言と行動、偶然が結びついた最悪な結末。そんな想像を絶する最終回が頭を過ぎる。
最悪な結末を迎える前に、止めなければ。
手遅れになる前に────……ッ。
『大切な友達を、……家族を守りたい。
あの時、守れなかった自分が憎い。
避けてた自分に腹が立つ。
だから……、俺は決めたんだ。
絶対に大切なものは手放さない。絶対この手で、
……───────守ってみせる。』
お前はそんな事を僕に教えてくれたな。そうだよ。僕だって、やっと見つけたこの幸せを……
手放す訳にはいかないんだよ─────…!!
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