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時に、旧魔王戦役の時代。


「おい、ガジュマル。このアホどもをどうする?」


眼帯でカンフー服のレッサーパンダ、ファルコン・チャン(後のレサパン商人)の冷酷な問いかけ。

周囲では配下のエルフやドワーフたちが陰険な笑みを浮かべ(エルフがしたらダメな表情で!)、柱に縛りつけられた魔族の捕虜数名を囲んでいる。

ガジュマル・リーは無骨なナイフを持った、いかついエルフの青年。顔や腕に刺青まで入れて、凶暴と残忍のオーラを漂わせている。


「酷刑」


「是!」


「凌遅」


「是!」


目をギラつかせたガジュマルは、まず陰茎を睾丸を切り取る。それを受刑者魔族の口に詰め込んで、針金のような金具で唇を貫いて縫い合わせる。吐き出せないように。

どっと歓声が上がる。


「凌遅刑だ! 愚かな魔族どもに、身でもって恐怖を教育してやらなければならない! 我々を思い出すだけで震えが止まらなくなるよう、この辺りいるだけで吐き気がして生きた心地がしなくなるよう。奴らを躾けてやる見せしめだ!」


拳を振り上げたガジュマルにレッサーパンダのボスは腕組みで満足げに頷き、構成員メンバーたちも賛成の怒号を上げる。皆が怒り狂っているのであった。

この「凌遅」とは、恐るべき古代チノ帝国が編み出した残酷刑罰の筆頭格で、生きたまま何百回も肉を切り取って殺すやり方だ。

まず、ガジュマルが胸元の肉を切り取り、ナイフを次の者に渡す。切り取られた傷跡からは恐怖であまり血が出ず、魚の鱗のような切り口になっている。別名「魚鱗刑」たる由縁であった。

肉片は、痩せ衰えた魔族の捕虜に投げ与えられる。地面に口をつけて貪り食う姿は動物のようで、手足はへし折られ切り刻まれ、銀の釘が打ちつけられている。両目は抉られて、真っ暗な眼窩にはとっくに知性が欠落している。頭にも釘が何本も刺さっていた。


「ひいいいいい!」


怯える魔族の捕虜を取り囲んで残酷刑罰を執行しつつ、「リョーチ、リョーチ」と手拍子しながら、皆が残酷な笑顔で見守る。


「ひゃめいぇくれ!」


命乞いに呻く顔面に、ガジュマルの鉄拳が炸裂する。口が切れて血を流し、折れた歯を吐き出したところへ、さらにボディブローが太鼓を破るような音を立てる。容赦はない。

嘔吐する魔族捕虜。もしかしたら、肋骨にひびくらいは入ったかもしれない。


「やかましいんだよ、この豚犬野郎!」


そのまま殴り殺しそうになるガジュマルを、仲間たちがどうにか制止する。あまり楽に殺してはダメだ。


「殺す。ゆっくりと、殺す」


鬼の形相で歯の間から押し出すように呟く。燃え立つ憎悪で目が血走っている。しかし、彼だって最初からここまで凶暴凶悪だったわけではなかった。

最初は普通にエルフ村で慎ましくものどかな暮らしを営んでいて、人間の村にもシューマイや薬草を売りに行っていた。ところが人間村が魔族の襲撃で襲われて惨状を目の当たりにし、妹が誘拐されて探す目的で反魔王レジスタンスに入団したのだ。

だが、ようやく再会した妹は剥製にされて飾られ、両手足と乳房・肝臓は切り取られていた(魔族の晩餐にされたのだろう)。無残に切り拓いて展示された腹の中には魔族との赤ん坊が晒されていた。

以来、ガジュマルは完全な復讐鬼と化していた。みんな、多かれ少なかれ、似たり寄ったりだ。


「よーし、埋めてやろうぜ」


最後に柱ごと穴に向けて倒し、みんなで投石して、そのまま生き埋めにする。

村の老人や女たちも参加していた。エルフ・ドワーフや人間の生き残りたちも。