退院して、一週間が過ぎた。経過も良く、症状も遥かに落ち着いた。


今日から、学校だ。


「おはよう」


「おはよう、愛。体調は、どう?」


お母さんは、あれから私を結構心配しているみたい。かと言っても私がうざくならない程度に。



「大丈夫だよ!何か、気分がいいんだよね。どうしてかな?」


「ふふっ。何かいいことでもあったからじゃないのかしら?」


お母さんの瞳は、私の思いを見透かすようだった。



その通り、だった。私は、あのトゲトゲした性格の空翔に恋をした。一目惚れ、ってやつなんだと思う…。



「おはよう、愛。無理するんじゃないぞ」


お父さん。お父さんは、単身赴任をこの前まででしていたけれど私の病気が発覚してからは何かと家にいることが増えた。


「うん、ありがとう」





「行ってきまーす!」


「いってらっしゃーい」







「まーな!おはよ」



声をかけていたのは、大親友の梓川美南(あずさがわみな)だ。彼女とは、中学校で出会い仲良くなった。彼女は、私が病気を患っていると知っている。彼女は、何かと頼れる存在でいわゆる姉御肌タイプでもある。でも、意外に繊細で本人は気にしないふりをしようとしているけれど何気ない一言に深く傷ついているのも知っていた。


「おはよ、美南」


「ねぇ、体調は大丈夫?無理してない?」

美南の心配を無くすため、わざと明るい声を出して安心させた。私の声に、どこか腑に落ちないという顔をしつつも納得はしてくれた。




気がつくと、学校の正門の近くに人の群れがあった。それを、うまくよけようとしたとき思いも寄らない声が私の耳に届いた。


「ねぇ、空翔くんよ〜!!今日もかっこいい!私、空翔くんの彼女になりたいわ〜!!」



く、空翔って言った?


少し群れから外れたところに移動するとあの日出会った空翔、張本人だった。



マジで?空翔と同じ学校だったの?初耳何ですけど…。


「ねぇ、美南。あの、空翔って子前にもいた?」


「え!あの空翔くんを知らない人がいるの!?」


「ここにいますけど…」


「う〜ん、そうだね。ずっといたよ。なんかね、風の噂なんだけど彼、大切な人を失ってから自分の殻に閉じこもって感情を感じることが出来なくなった、っておんなじクラスの子から聞いたよ。でも、所詮噂出しね〜」


大切な人が、亡くなったから感情を感じることが出来なくなった?感情を感じることが出来なくなったのは知っているけれど…。大切な人って言うことはよほどのショックを受けたのだろうな。



そんなことを思いながら教室棟へ向かった。