菜々子と健太の関係は、日々深まっていった。
 健太の優しさと愛情に満ちた態度は、菜々子の心に安らぎを与えていた。彼女は徐々に健太への愛情を深めていき、二人の間には確かな絆が生まれていた。

 一方、大地は自分の心の中で菜々子への感情と向き合っていた。美香との関係には感謝していたが、菜々子への未練が拭えずにいた。
 彼は深く考え込み、ついに重大な決断を下すことにした。大地は美香と話し合い、お互いのために関係を終わらせることにした。

 美香は大地の決断を悲しんだ。
 ひとしきり泣いた後、彼女は静かに言った。
「それがあなたの答えなら……私はどうしようもない。正直に話してくれて嬉しかった、ありがとう」
「美香……ごめん、ありがとう」
 二人はお互いに感謝の気持ちを伝え合い、別れを告げた。

 大地は菜々子への想いを胸に、彼女に会いに行くことを決めた。彼は菜々子に自分の本当の気持ちを伝えようと決心していた。

 同じ頃、健太は菜々子にプロポーズを考えていた。彼は菜々子との未来を描き、彼女に永遠の愛を誓う準備をしていた。
 健太は菜々子を特別なレストランに招き、大切な言葉を伝えるつもりだった。

 しかし、その前に、菜々子は偶然大地と再会した。
 大地は彼女に自分の気持ちを打ち明けた。
「奈々子……俺、やっとわかったんだ。自分の本当の気持ち。今まで、当たり前のように傍にいたから気づかなかったけど。俺はずっと昔から菜々子のこと……好きだった」

 菜々子は大地の言葉に驚き、心は揺れた。
「でも……美香は?」
「別れた。俺の気持ちを正直に伝えたら、わかってくれた」

 菜々子は嬉しい気持ちと同時に健太の顔が思い浮かぶ。彼女は長い間大地を想い続けていたが、健太への愛もまた本当だった。
 菜々子は混乱した頭と心を落ち着けたかった。

「私、考える時間が欲しい」
 と菜々子は静かに言った。


 健太は菜々子にプロポーズするため、美しいレストランを予約し、菜々子への愛を込めて指輪を用意した。
 海を見渡すテラスで、二人は美しい夕日を眺めながら食事を楽しむ。健太は緊張で話しの内容が頭に入ってこなかった。

「菜々子さん、これからもずっと一緒にいてください。あなたのことを愛しています。あなたといると俺は幸せなんです」
 と健太は思いの丈をぶつけた。

 その瞬間、菜々子の心には大地が浮かんだ。
 健太の真剣な眼差しを受けながら、彼女は動揺した。大地のことが、まだこんなにも自分の心を支配していたことに。
 健太のことは大切な存在だ、愛情も感じる。しかし……自分の気持ちには嘘がつけなかった。

「健太くん、ごめんなさい。私、まだ……」
 と菜々子は言葉を詰まらせた。

 その時、レストランの入り口から大地が姿を現した。彼は菜々子への想いを断ち切れず、彼女を探していたのだ。

「菜々子!」
 と大地が叫んだ。

 菜々子は大地の姿を見て、自分の気持ちを確信した。彼女は深く息を吸い込み、自分の心に正直な言葉を口にした。

「私は……私は大地くんのことがまだ好きです。健太くん、本当にごめんなさい」
 と菜々子は静かに言い、頭を下げる。

 健太はひどく傷ついたが、菜々子の幸せを願う優しい人だった。
「分かったよ。君の幸せが一番だから」
 と健太は涙をこらえながら言った。

 大地は菜々子に近づき、彼女の手を取った。
「菜々子、俺、あきらめきれなくて。君じゃないと駄目なんだ。俺は君じゃなきゃ幸せになれない」と。

 菜々子と大地は抱き合った。長い時を埋めるように深く強く。そんな二人を見ていた健太は深いため息をつき、そして、微笑んだ。
 健太は菜々子の幸せを心から願っていた。
「おめでとう」
 健太が菜々子に囁くと、菜々子の目から涙がこぼれた。
「……ありがとう」
 健太は大地の耳元で、
「泣かしたら、許さないからな。俺が奪う」
 そう言い残して去っていった。

 大地は健太の後ろ姿を見つめ深く頷いた。

「菜々子、俺、必ずおまえを幸せにする。二人で一緒に生きていこう」
 と大地が言った。

 菜々子は彼のぬくもりに包まれながら、
「うん。大地、愛してる」
 二人が口づけを交わすと、周りからあたたかな拍手が聞こえた。
 二人とも顔を真っ赤にしながら、お互いの顔を見て笑った。


 大地と菜々子の新しい生活が始まってから、時間はあっという間に過ぎていった。彼らは共に過ごす毎日を心から楽しんでいた。今まで埋められなかった二人の想いを大切に育んでいった。
 大地と菜々子は幸せだった。その幸せを二人は噛みしめる。

 ある透明な朝、二人はかつての学校へと足を運んだ。
 春の息吹が校庭を包み込み、桜の花が満開になっていた。

「ここは俺たちにとってすべての始まりの場所だ」
 と大地が懐かしそうに言った。

「うん、私たちにとって大切な場所だね」
 と菜々子が微笑みながら答えた。
 二人は静かに学校の周りを歩き、過去の思い出に浸った。

 その後、彼らは小さな教会を訪れた。
 そこは菜々子が子どもの頃から憧れていた場所で、二人はここで結婚式を挙げることに決めていた。教会の中に入ると、ステンドグラスから差し込む光が彼らを優しく包み込んだ。

 結婚式の日、菜々子は白いウェディングドレスを身に纏い、大地は真っ黒なタキシードで彼女を迎えた。二人は祭壇の前で、深い愛と永遠の誓いを交わした。

「これからの人生を、菜々子と共に歩むことができて、俺は本当に幸せだ、本当にありがとう」
 と大地が言った。

「私も、大地くんと一緒にいられることが一番の幸せ」
 と菜々子は笑ったが、瞳には涙が浮かんでいた。

 式の後、ゲストたちは二人の幸せを祝福し、空には美しい花火が打ち上げられた。色とりどりの花火が夜空を彩り、その下で菜々子と大地は手をつないでいた。まるで、長い年月を経て辿り着いた彼らの愛の物語を祝うかのように。

 式が終わった後、二人は静かな海辺を散歩した。波の音が穏やかに聞こえ、星空が彼らを見守っているようだった。

「星に願いをしてよかった、私の願いは叶ったよ」
 と菜々子が言うと、
「ああ、俺も」
 と大地が答えた。
「大地の願いって何?」
 菜々子が期待を込めて尋ねる。
「何だったけ?」
 大地はとぼけた。
「あ、ひどい」
 菜々子が頬を膨らませる、
「わかってるだろ?」
 と真剣な眼差しを菜々子に向けた。

 大地は菜々子を愛おしそうに優しく抱きしめた。その体温から気持ちが伝わってくるようだった。
「俺の願いは君だよ」

 二人は夜空に輝く星々を見上げる。すべての瞬間が、この時へと導いてくれたことに、深い感謝を感じていた。
 二人の愛は時を超え、永遠の絆となった。