私は中学生のとき、校則をしっかり守る真面目な生徒だった。
 髪の毛が肩についたら結び、スカートは膝下の長さを保っていた。制服のポケットをカラフルなヘアピンで飾ることもなかった。

 陽キャとか陰キャとか、そういった言葉を知る以前も、私はいわゆるスクールカーストを感じながら日々を過ごしていた。たしか、クラスで目立つ気の強いオシャレな女の子たちのことを心の中で密かに「キラキラ女子」と呼んでいた。

 私はキラキラ女子ではなかった。
 キラキラ女子は、いつも群れで行動していた。トイレにも大人数で行って鏡を占領する。正直言って、迷惑。私はキラキラ女子が嫌いだった。
 
 校則を破ることは悪いことに決まっている。
 だって決まりでしょ?
 先生にも注意されるし。

 だけど、だけど。
 だけど私は彼女たちの短いスカートが憧れで。

 私だって制服のスカートを短くしてみたかった。

 制服のスカートを短くできなかった私は、今年の春大学二年生になった。大学には様々な服装の学生がいるが、私はミニスカートを履いていない。あの頃あんなに憧れていたミニスカートなのに。

 あの頃の、あの教室は今思うととても窮屈で狭い世界だった。
 私が本当にやりたかったことはただ短いスカートを履くことではなかったのだと思う。
 あの教室で短いスカートを履くことに意味を見出していた。

 今思うと笑っちゃうね。
 たかがスカートの長さで。

 でも、そのスカートの長さのことを考えるくらいあの頃の教室は居心地が悪くて、私は繊細で。

 もしもタイムスリップして、またあの教室に戻ることになってもきっと私はスカートの長い自分に嫌気がさすのだと思う。
 そして心の中でこう呟くのだ。
 制服のスカートを短くしてみたかった、って。