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 ぽつぽつと会話を繋ぎ、レンタル終了まで残りわずかとなった。

 駅の改札へ向かって、彼女と歩く。すると、通路の端で身をよじって踵をのぞき込んでいる老婦人を見つけた。薄い眉は苦痛に歪み、踵は赤く腫れている。

 もしかして――。

「あ、あの、もしかして靴擦れですか? もしよかったら、絆創膏……」

 私がバッグのなかから絆創膏を見つけだすよりも先に、彼女はそう言って老婦人に絆創膏を差し出した。

 か細い声に、震える指先。老婦人は束の間、驚きを浮かべてからにっこりと微笑んだ。

「どうもありがとう。そうなの、春物のパンプスをおろしたら、靴擦れしちゃって。うちからここまでは遠いからやめておけばよかったのに、どうしてもこれを履きたくなってしまってねえ」

 老婦人は少女のようにふふふと笑みをこぼし、彼女から受けとった絆創膏を踵に貼った。踵部分にはわずかに血がついてしまっていたものの、薄紅色と金色の糸で紡がれたツイードのパンプスは、じゅうぶんに輝きを放っていた。

「ああ、よかった。さっきとはまるで違うわ。ありがとう。ところで、あなたち……」

 きょろきょろと瞳を動かし、老婦人が彼女と私を交互に見る。