「レンタルしたから。土曜日、東口に一時ね。彼女を待たせたりしちゃ駄目だよ」

 妹はとうとつに言い、とうとつに電話を切った。



 ***

 会社の先輩が紹介してくれた人と食事に行ったら、次の日からぱたりと連絡が途絶えた。こんなことばかりだから、きれいさっぱり恋愛方面は諦める――と、うっかり妹にこぼしたのは一週間ほど前のことだった。

 レンタル彼女。レンタル家族。レンタル友達。

 お金さえ払えばなんだってレンタルできる便利な世の中。テレビやインターネットにあまり触れない自分ですら知っているということは、世間での認知度も高いのだろう。

 だけどまさか、実際に自分が利用する日がくるとは思ってもみなかった。

 妹は「とにかく行け」と言ってこちらの意思をまったく尊重せず、ドタキャンすることも考えたけれど、それでは彼女に申し訳ない。それにまったく興味がない、といえば嘘になる。

 いったい、どんなものだろう?

 見知らぬ国にはじめて足を踏み入れるような不安と淡い期待。こうして待ち合わせ場所に来てみれば、その勢いは増した。