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 罪を犯した罪人は、罰を受けなければならない。
 つまりシャーペンを盗んだわたしは罰を受けなければならない――けれど、これはいったいどういう罰だろう。

「小春ちゃん、ほんとうにコーヒーだけでいいの?」

 たっぷりの油と砂糖の香り。きゃあきゃあ騒ぐ学生たち。
 わたしのテンションとはひどく対照的に、ドーナツショップは賑わっていた。

 教室で見せた表情をすっかり消して、何事もなかったように明希がドーナツを頬張るので、わたしもコーヒーに口をつけてみる。コーヒーはいつもよりやけに苦々しく、舌に残った。

「俺のドーナツ、半分食いなよ」

「ううん。いい」

「いつも教室で菓子いっぱい食ってるじゃん。ほら、遠慮すんなよ」

 明希はチョコレートのかかったシンプルなドーナツを半分に割った。チョコレートのたっぷりかかった方をわたしにくれたのは、やさしさだろうか。

 ちびちびとドーナツをかじると、舌に残っていた苦味が薄れ、口のなかの水分をぜんぶ持っていかれた。ふたたびコーヒーに口をつける。