★★★

 待ち合わせの十五分前に駅につくと、明希はもうそこにいた。

 日曜日ということもあってか、駅前はけっこうな混雑だった。それでもすぐに明希を見つけられたのは、寒空の下でひかる髪色のせいか、それとも――。

「明希、お待たせ」

「メリクリ、小春ちゃん」

 はじめて見た明希の私服は、意外にもモノトーンでまとめられていた。
 ダッフルコート姿を見慣れていたせいか、レザージャケットを着た明希はいつもよりずっと大人びて見える。

 シャープな顎のラインだとか、なめらかに動く喉ぼとけだとか、今日はやたらと細部が目につく。

「小春ちゃんの服、かわいいね。お星さまみたい」

「あ、ありがとう……」

 真冬の空に星を散りばめたようなワンピースはお気に入りで、着るのがもったいなくてずっとクローゼットで眠っていた。
 わたしにはかわい過ぎる気がしたのも、着れない理由だった。

 だけど明希が「プレゼントはまじでいらないから、めいっぱいかわいくしてきて」と言ったので、勇気を出して袖を通した。

 勇気、出してよかったな。

 コーディネートに合わせて買ったリップから、さくらんぼがほのかに香る。