もっと上手く隠せばいいのに。
彼らのあまりのわかりやすさに、わたしは呆れた。

おそらくナツミはこれまでの人生、ずっとその立場だったのだろう。
調子にのるわけでも恐縮するわけでもなく、男女問わず誰の前でも花のような笑顔を見せ、魅力を振り撒いた。

天性の人たらし。

いい意味でも悪い意味でもなく、そう思った。


天性の人たらしの横で、私は笑う。
死んだ目で。
乾いた声で。


――断っちゃえばいいんじゃない?


ある日、斜め後ろからぼそりと聞こえた。
振り返ると斜め後ろのクラスメイト――芳賀は、大きな黒目を細め、小さく笑った。

――無理すんな。

唇だけで、そう言われた。

アメコミヒーローが大好きということしか印象のなかった斜め後ろのクラスメイトが、その日からわたしのなかに存在を持った。


それから少し経った頃、ナツミに彼氏ができた。
お姫様の彼氏はやはり王子様で、お姫様と王子様が並ぶ姿には、誰もが羨望の眼差しを向けた。

しかし、その姿はたったの一か月で終わりを迎える。


王子様はやんちゃだったのだ。
下半身的な意味で。