転がっていくそれを拾い上げると、ペットボトルのなかでは黄金色の液体が泡立っていた。


ジャスミンティーは芳賀の彼女、そしてわたしの友達であるナツミのお気に入りだった。


芳賀とナツミとわたしは、高校生活の最後の年に同じクラスになった。
席が前後だったナツミとわたしは、自然とよく話すようになっていた。

――セツもおいでよ。

男の子たちによく囲まれるナツミは、桜貝のような指先で私を手招きをした。
ギラギラした目で、制汗剤やら安物の香水の匂いをプンプンさせる男の子と、話したいとは思わなかった。

けれど空気を壊すのも面倒で、わたしは輪に加わり、適当に相槌を打って適当にやり過ごした。
死んだ魚みたいな目も、口角をあげて細めてしまえばわからない。

そもそも彼らのお目当てはナツミだ。
わたしの目が新鮮だろうが死んでいようが関係ない。


よく熟れたさくらんぼ色の唇で舌足らずにしゃべり、ゆるく巻かれた天然の茶髪をいじるナツミはクラスのお姫様だった。


男子生徒はもちろん、男性教諭までもがナツミの前では鼻の下を伸ばす。
おこぼれをいただこうとナツミに媚びる女の子もいた。