「麦茶とビールとチューハイしかないけど、せっちゃんどれがいい?」

「麦茶って小学生か」

「いや、飲むだろ麦茶」

「そこは緑茶かウーロン茶でしょ」

「あ、ジャスミンティーもあるわ」

「チューハイ。チューハイがいい」

差し出された二本のチューハイのうち、筆文字でガッツリレモンと書かれた方に手をのばす。
アルコール度数の高いほうだ。

「せっちゃん、いつから待ってた? 腹へってない?
あ、冷房効きすぎ? そこ冷房直撃だけど。
それとも、むしろ暑い?」

矢継ぎ早に質問される。
答える隙がありゃしない。

これは、「なにかあったわたし」の扱いに困っているのか、「女であるわたし」と密室に二人きりという緊張感からなのか。

後者ならいい。
でも、前者に決まっている。
考えるまでもない。

「待ってたのはたぶん一時間以上、三時間未満。わかんないけど」

「わかんないって?」

「スマホがないから、時間がわかんない」

「スマホ持たずに出かけるって、お前はうちの母ちゃんかよ。
アポなしで来るところも同じだな」

「うるさいなぁ」