「友達多くないし、見張るほど暇じゃないよ」

「よく大人数でいるじゃん」

「ああいうのは知り合いっていうの。友達は少ないよ」

「そっか」

子どもみたいな照れくさそうな横顔に、こっちまで照れくさくなってしまう。
恥ずかしくなるなら最初から聞いたりしなきゃいいのに、と思いつつ、芳賀を片想いみたいな気持ちにさせたのは気分がいい。
わたしにも、芳賀をもやもやとさせることができたのだ。

そこには友情しかないけれど。
おあいこには、程遠いけれど。

「まぁいいか」

呟いたわたしに芳賀が「せっちゃん、なにか言った?」と訊く。

「なんでもない」

わたしは嘘じゃない笑顔で答えた。


――もし、わたしの運命の人がどこかでわたしと同じように歯痒く、切なくなっているとしたら、どうか束の間でも光が射しますように。
どうか少しでも早く、わたしたちが落ち合えますように。


ぼんやりと淡い月に願う。

運命の人もどこかで同じ月を見ているだろうか。
いつになるかわからない運命の人との待ち合わせは、ひどく頼りないけれど、ひどくロマンティックかもしれない。