「食べないなら返して」

「やだっ。あげない」

小さな口でアイスをかじった。

しなしなしたモナカの皮。
歯触りも舌触りも悪い。

「もう遠距離がつらいんだってさ、ナツミ」

「え?」

「ずっと会えなくて寂しいときに、近くにいるやさしくしてくれる人にふらふらっとしそうで、そういう自分がいやだって言われた。
ものすごく……いやなんだってさ」

白い月に薄く照らされる横顔。
お互いの歩幅は狭くなり、細長い真っ黒な影がアスファルトにのびる。


わたしは友達が少ないことを悔やんだ。

こんな話をされた経験がなくて、かける言葉が見つからない。

なんて言うのが正しいだろう。
なんて言えば少しでも楽にできるだろう。

わたしの言葉なんかで、どうにもならないことはわかっている。
それでも、少しくらいは。

「まぁ、あれだよな。
浮気されて別れるよりはいいよな。
それにタイミング的にもさ、おれ地元に戻ろうか、こっちで就職しようか考えてたからちょうどよかった」

「芳賀……」