「はー……おれ、久しぶりにこんなに笑ったかも」

「久しぶり?」

「はい、別れました」

「……え」

「やっぱりナツミから聞いてない?
だよな。せっちゃんなにも言ってこないから、知らないだろうな、とは思ってた」

芳賀の言っていることが、ちゃんと頭に入ってこない。
入ってきてもすぐに弾かれる。

別れました。
わかれました。
ワカレマシタ。

意味なんて、ひとつしかない。

「まだお腹、はいるよな」

今度はモナカのアイスを半分差し出される。
指がもつれ、落としそうになりながら受け取った。
バニラアイスからチョコが覗く。

「やっぱ安定のうまさだな」

チョコとバニラアイスとモナカ。
そりゃきっと安定においしいんだけど。
そうじゃなくて。
そういうことじゃなくて。

「いつ、別れたの」

「十日くらい前」

「なんで言ってくれなかったの」

「ナツミから言うかなって思ったし、かっこわるいから」

「かっこわるくないよ」

「そっか。おれはかっこいいか」

「芳賀がかっこいいとは言ってない」

モナカアイスを三口で食べ終えた芳賀が笑う。
わたしの手のなかのモナカアイスはまだ正方形のまま。