「カッとして言い過ぎました。ごめんなさい」

店員が釣りを用意する僅かの間、芳賀が言った。

「わたしもごめん」

急いで返したわたしの謝罪には、店員の大きな「ありがとうございましたー」の声が被さった。
ちゃんと聞こえただろうか。

「ちゃんと聞こえたよ」

わたしの心の中を読んだように芳賀が言う。
上唇の富士山はなだらかだ。

へたくそな鼻歌を口ずさみながらソーダアイスを取り出し、真ん中でポキリと割って、半分をわたしに差し出す。
ひんやりとする舌。

等間隔の街灯が、ラムネ色のアイスをオレンジに染める。

「もしかして、さっきのが三歩手前くん?」

「うん」

「せっちゃん、あいつはダメだ」

なんでよ、と言いたいのに、大口で頬張ったアイスが邪魔をしてしゃべれない。
急いで嚙み砕くと歯茎がキンと痺れた。
ますますしゃべれない。

「あいつはなんか、えっちな感じがする。
ああいうイケメン風な男はよろしくない」

「えっちな感じって、なにそれ。
それにイケメン()じゃなくて、かっこいいじゃん」

御子柴くんはおそらく世間一般でいうところの、イケメン枠に入る。
申し訳ないことに、それに気付いたのはついさっきだけれど。