「アイス、高いやつでも買ってくれる?」

「いいですよ。二つでも、三つでもどうぞ」

「太っ腹だね」

「だって下心がありますから」

そう言って笑う御子柴くんは、まったく芳賀に似ていなかった。

同じなのは八重歯だけで、芳賀よりも肩幅は広いし、足元には芳賀なら絶対に履かないようなモノトーンのスニーカー。
話し方も笑い方も、芳賀とは違う。

わたしはこの人のなにを見ていたのだろう。

「なんか雰囲気が違うなーと思ったら、節子さんすっぴんなんですね。暗くてわからなかった」

「あ、あんまり見ないで……」

咄嗟に両手で顔を隠した。
御子柴くんが一歩、二歩と近づく。

「見せてくださいよ。すっぴんかわいいです」

「お友達になったんじゃないの?」

「溢れました」

がっちりと両手で顔を覆いながら、背中を丸めた。
散々漫画で読んできた「すっぴんかわいい」という言葉が、こんなに恥ずかしいものだとは知らなかった。
頬から耳まで赤く染まっていく。

「せっちゃん大丈夫?!」

突然耳に入ってきた、よく聞き慣れた声。

体温の上昇がピタリと止まる。
顔を上げると、その声の持ち主――芳賀がいた。

待って。
どうして拳なんて握りしめてるの。