「俺も友達の振りすればいいですか?」

「いや、もう好きって聞いちゃったから……」

「じゃあ好きって言ったことは取り消させてください。
いまから俺と節子さんはお友達です。お友達」

好きの取り消し。
そんなシステムがあるなんて聞いたことない。

「そうだ節子さん。お友達記念にアイスでも食べません?
なんか小腹がすいちゃって」

「友達が待ってるんじゃないの?」

「迷子になったって言うんで大丈夫ですよ。
食べましょう、お友達記念アイス。
そうだ。お友達になったんで、もし俺に他にいいなーって人が現れたら、節子さんは俺の恋を応援してくださいね」

まぁなかなか現れないでしょうけど、と御子柴くんは笑った。
わたしが芳賀の前でする笑顔と同じ笑顔。
傷を覆う、嘘の笑顔。

「しぶとくて、すいません。
でも、まだ諦めたくないんです。節子さんのこと」

三日月になっていた目がゆっくりと開かれ、視線が触れ合った。
一瞬だけ世界が止まり、お互いほんの少し困ったように、ふっと笑った。

ベンチから立ち上がった御子柴くんとわたしを、街灯が照らす。