「男女の友情は成立するよ」なんて言うような男を、好きになるんじゃなかった。

指先が触れようと、他の男の話をしようと、風呂上がりのショートパンツ姿を見せようと、百パーセント友達の反応しか返ってこない。

男女の友情なんていらない。
ちょっとでいいから欲情してよ。
勢いでいいから抱こうとしてよ。

これ以上、わたしを惨めにさせないでよ。


「だってー、好きになっちゃったんだもん。しょうがないでしょー」


まだら金髪集団の女の子が甲高い声をあげた。
濃い化粧のしたの幼い顔で女の子は笑い、周囲も同じように笑いながら「応援してるね」と彼女にエールを送っている。

そうだ。
好きになったらしょうがない。

すっぱりと引くことなんて出来ない。
どんなに苦しくても、どんなに惨めでも。

そういう処理のしようのないものから逃げたくて、わたしは御子柴くんを利用してしまった。
そのくせ距離が近くなった途端に逃げ出した。

手を振りほどけばよかった。
のこのこ水族館に行かなきゃよかった。

期待を抱かせるなんて、残酷このうえない。
いったいわたしは何様だよ。
ばかやろうは芳賀じゃなくてわたしだ。

芳賀を好きになったからこんな嫌な女になっちゃったなんて、こじつけにも程がある。
こうなったのは全部わたしの責任。

「もしかして節子さん?」