わたしはいったい、なにをやっているのだろう。
芳賀のアパートから少し離れたコンビニの街灯には、小さい虫やら髪をまだらな金髪に染めた高校生やらが群がっていた。
声をかけられたりしたらどうしようと思ったけれど、彼らの顔はまだあどけない。
わたしの方には見向きもしなかった。
ホッとしつつ、深夜にTシャツとショートパンツ――それに、お財布もスマホも持っていないというのは心細い。
この辺りに住んでいる友達もいないわたしには行くあてもない。
どう考えても芳賀のアパートに戻るしか道はない。
コンビニの前のベンチに座り、長いため息を吐くと芳賀のアパートの歯磨き粉の匂いがした。
御子柴くんは、どれくらいアパートの前でわたしを待ったのだろう。
電柱の影から御子柴くんの様子を伺ったのが、たぶん十分くらい。
そのあとコンビニで時間をつぶしてからアパートに戻ったときにもまだいた。
蒸し蒸しと湿った空気のなか、ただわたしの帰りを待つ御子柴くんはなにを思っていただろう。
間違いなく、わたしは御子柴くんを傷つけた。
キスを避けたあと、俯くわたしに降ってきた「ごめんなさい。帰りますね」の声は微かに震えていた。