「シャワー貸してくれてありがとう」

すっぴんで芳賀の大きなTシャツを着て、芳賀と顔を合わせるのは気恥ずかしかった。
もちろん芳賀はなにも気にしていない。

「おれもシャワー浴びちゃうから、せっちゃんは好きにしてて」

「そういうこと言うと、ベッドの下とか見ちゃうよ」

「ははは。ベッドの下にはないから大丈夫」

自分から振っておきながら芳賀の答えに頬が染まる。
ついつい芳賀のそういう姿を想像してしまった。

やっぱりわたしは重症だ。変態だ。

「あれ。せっちゃんの目の周り赤くない? どしたの?」

にゅっと首をのばして顔を近づけられる。
そんな毛穴まで見えそうな距離で見ないで。
わたしはナツミのような透き通る白い肌を持っていない。

「メイクがなかなか落ちなくて、こすっちゃったから……」

「女の子って大変なんだなー」

間に合わせで買ったアイライナーは、よく滲むくせにメイク落としではなかなか落ちなかった。
どこかのインフルエンサーがおすすめしたせいで、どこに行っても売り切れになってしまった愛用のアイライナー。
欲しいものが必ず手に入るとは限らない。
逆に、思いがけないものがどこからかポーンとやってくることもある。

彼氏の三歩手前――御子柴(みこしば)くんとは、今年はじめて半袖を着た日の飲み会で出会った。