「なに見てんの?」

すぐ隣に、洗い物を終えた芳賀がストンと座る。
なんの躊躇もない。

「この芸人、いま人気みたいだけど、おもしろい?」

「さぁ。わたしには、いまいちわかんない」

「そっか。せっちゃん、お笑いには厳しいからなぁ」

距離が近過ぎる。
芳賀の匂いが鼻をくすぐって、芳賀の声が耳たぶをくすぐって、心臓がはやい。

どうして心臓って、こんなにばか正直なんだろう。
余計に気がおかしくなる。

「わたし、シャワー借りるね。もう酔ってないから」

「ちょっと待って。はい、これ」

がさがさとクローゼットを漁った芳賀がTシャツとショートパンツを差し出す。

「このショートパンツって……」

口にしてから後悔した。
どう見ても女物のパイル地のショートパンツ。

きっとナツミがこのアパートに泊まったときに忘れていったものだ。
いかにもナツミが好きそうな、小さなくまの刺繍がワンポイントでついている。

「せっちゃんならナツミもきっと怒らないよ」

「うん、そうだね」

「丈が少し短いかもしれないけど」

「ナツミ、ちっちゃいもんね」

小動物みたいに、体のパーツがすべて小さいナツミ。
それなのに、なぜかおっぱいとお尻はちゃんとある。
いったいなにを食べていればああなるのか。