「せっちゃん、水飲みなさい、水。
そこまでお酒強くないでしょ」

「平気だよ」

「平気じゃないっつーの」

水がなみなみと入った大きなグラスを渡される。
指先が触れる。
あたたかな視線が注がれる。

その指先から、その瞳から、嫌というほどわかる。
芳賀がわたしを「彼女の友達」としか思っていないことを。

酔ってるはずなのに、胸はちゃんと痛い。

「シャワー貸りていい?」

「いいけど、酔いが冷めてからしな」

「酔ってない酔ってない」

「せっちゃんがそうやって二回繰り返して言うときは、酔ってるとき」

「嘘だー。そんなことないよ、ないない。絶対絶対、ない」

「ほら。二回繰り返してんじゃん」

言われて気付く。

わたしのこと、知ってるんだな。
好きでもないくせに。

「とりあえず、酔っ払いは洗い物でもしよっかな」

丼を持って立ち上がると、すぐに丼を奪われた。
指先がまた触れる。

「酔っ払いは大人しく座って、なんか見てなさい」

床に転がったタブレット端末を顎で指し、芳賀は鼻歌まじりに洗い物をはじめた。

かわいいなぁ。
にくいなぁ。
へったくそだなぁ。