「何度かデートして手も繋いだけど、好きじゃないの?」

もう一度頷く。
眉を寄せる芳賀が、次になにを言うのかは予想がつく。

「我慢してキスしろって言いたいわけじゃないけど、向こうは期待しちゃったんじゃない? 自分に気があるんだって」

ほらね、やっぱりね。そうだよね。
わたしだってそう思うよ。
手繋いでヘラヘラ笑ってたら、そりゃ期待するよ。

そりゃあ、そうなんだけど。

「あのさぁ、もっと考えて行動しなよ」

瞼を伏せた芳賀は、長いため息を吐いてうなだれる。
そんなにぐったりしなくても。

「もしかしたら、おれを期待させやがってって、怒りに来たんじゃない?」

「怒ってはいないと思う……」

「そうだとしても。好きじゃないなら、考えて行動しなよ」

「でも、好きじゃなくても……そういうことだってあるじゃん!
芳賀にはわからないだろうけど」

荒ぶって吐いた言葉でチクリ、棘が刺さる。
怒りのような哀れみのような、なんとも言えない芳賀の瞳。

どうしてわたしは、自虐的で嫌味っぽいことを言ってしまうのだろう。

やり場のなさにチューハイを(あお)る。

かわいくない女。
嫌な女。
自分が男ならぜったい付き合いたくない女。

だから想いを確信した瞬間に、失恋するんだ。