その後、授業が終わると同時にいつもの友達の二人がやってくると、彼女達は私と亜美花ちゃんを見て困惑した表情を浮かべる。その様子を見た亜美花ちゃんはすっと笑顔を消すと一人、校舎の方へと去っていってしまった。
亜美花ちゃんの後ろ姿が見えなくなると、二人が口々に「大丈夫だった?」とか「睨んでたよね」とか言うので、「そんな事無いよ、良い人だったよ」と答えると、信じられないという顔で私を見る。
そうか、だから亜美花ちゃんは先に行ってしまったのだなと二人の反応を見て理解したと同時に、話す前の私だったらきっと同じ様な反応をしていたのかもと思うと小さな罪悪感が生まれた。
彼女はそんな人じゃないのに。
彼女の外見が変わった訳でも、休んでいた理由を知った訳でもない。でも自分と同じ境遇だと知って、自分の気持ちを気づかせて貰って、私自身を受け入れて貰えた今、私は自分と正反対の彼女に対して尊敬する気持ちを抱いていた。
彼女の事がもっと知りたい。一体彼女はどんな日々をどんな気持ちで過ごして来たのだろう。
——もっと話してみたい。自分の事も、彼女の事も。
教室に戻ると亜美花ちゃんはすでに席に座っていて、声を掛けようと近づくと、私に気付いた亜美花ちゃんと目が合った。けれど、それはすぐにそらされてしまった。話しかけないで欲しいという事かなと、落ち込みつつ私も自分の席に座る。
もしかしたら二人と同様に、私も亜美花ちゃんの事を怖がっていると思われたのかもしれない。良く考えたら先ほどの会話の最中の私の態度だって酷いものだったから。そもそも好きになれないだろうと初対面の印象から決めつけていた私は本当に最低だと思う。
なんとかもう一度二人で話せる機会がないかと、それ以降の時間はそわそわし通しだった。ちらちら亜美花ちゃんの様子を確認する私は挙動不審で、授業中に何度か「園田、集中しろー」と、名指しで注意を受けてしまったくらいだ。そんな私の様子に二人は、「どうしたの?」「体調悪いの?」と心配してくれて、「なんだかいつもの華菜らしくないね」という言葉を頂いた。
「私らしくない……?」
「そう。ずっと気もそぞろで真面目な華菜らしくない」
「別にもともと私は真面目じゃないよ」
「そうかな。いつも細かいとこまで気がつくし、嘘とか冗談とか言わないし、何にでも手を抜かないっていうか……なんていうか、いつも正しい感じが真面目だなって思うけど」
「そうそう。華菜がよそ見して注意されてるの初めて見たし」
「……別に、なりたくてなった訳じゃないんだけどな」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
真面目な私。そう言えば亜美花ちゃんも言っていた。私は別に自分の事を真面目だとは思わない。私にそう感じるのは私とみんなとの考え方の違いというか、生き方に対しての必死さの違いのせいだとばかり思ってきたけれど、同じ環境を生きる亜美花ちゃんもそう思うなら、もしかしたらそのせいだけじゃないのかもしれない。
亜美花ちゃんの後ろ姿が見えなくなると、二人が口々に「大丈夫だった?」とか「睨んでたよね」とか言うので、「そんな事無いよ、良い人だったよ」と答えると、信じられないという顔で私を見る。
そうか、だから亜美花ちゃんは先に行ってしまったのだなと二人の反応を見て理解したと同時に、話す前の私だったらきっと同じ様な反応をしていたのかもと思うと小さな罪悪感が生まれた。
彼女はそんな人じゃないのに。
彼女の外見が変わった訳でも、休んでいた理由を知った訳でもない。でも自分と同じ境遇だと知って、自分の気持ちを気づかせて貰って、私自身を受け入れて貰えた今、私は自分と正反対の彼女に対して尊敬する気持ちを抱いていた。
彼女の事がもっと知りたい。一体彼女はどんな日々をどんな気持ちで過ごして来たのだろう。
——もっと話してみたい。自分の事も、彼女の事も。
教室に戻ると亜美花ちゃんはすでに席に座っていて、声を掛けようと近づくと、私に気付いた亜美花ちゃんと目が合った。けれど、それはすぐにそらされてしまった。話しかけないで欲しいという事かなと、落ち込みつつ私も自分の席に座る。
もしかしたら二人と同様に、私も亜美花ちゃんの事を怖がっていると思われたのかもしれない。良く考えたら先ほどの会話の最中の私の態度だって酷いものだったから。そもそも好きになれないだろうと初対面の印象から決めつけていた私は本当に最低だと思う。
なんとかもう一度二人で話せる機会がないかと、それ以降の時間はそわそわし通しだった。ちらちら亜美花ちゃんの様子を確認する私は挙動不審で、授業中に何度か「園田、集中しろー」と、名指しで注意を受けてしまったくらいだ。そんな私の様子に二人は、「どうしたの?」「体調悪いの?」と心配してくれて、「なんだかいつもの華菜らしくないね」という言葉を頂いた。
「私らしくない……?」
「そう。ずっと気もそぞろで真面目な華菜らしくない」
「別にもともと私は真面目じゃないよ」
「そうかな。いつも細かいとこまで気がつくし、嘘とか冗談とか言わないし、何にでも手を抜かないっていうか……なんていうか、いつも正しい感じが真面目だなって思うけど」
「そうそう。華菜がよそ見して注意されてるの初めて見たし」
「……別に、なりたくてなった訳じゃないんだけどな」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
真面目な私。そう言えば亜美花ちゃんも言っていた。私は別に自分の事を真面目だとは思わない。私にそう感じるのは私とみんなとの考え方の違いというか、生き方に対しての必死さの違いのせいだとばかり思ってきたけれど、同じ環境を生きる亜美花ちゃんもそう思うなら、もしかしたらそのせいだけじゃないのかもしれない。