卒業式から約一週間。
ドキドキしながらも勉強は欠かすことなく、迎えた合格発表日。
発表時間にウェブサイトにアクセスし、泣きそうになりながら結果を照合する。
スマートフォンに記された、おめでとうございます、という文字に、かなでは数十秒固まっていた。
それから慌てて両親のところまで走り、外出中の姉には電話で報告する。
嬉しさと安堵の気持ちで胸がいっぱいになり、うまく呼吸ができない気がした。
それでも学校に連絡を入れ、お祝いの言葉をかけられると、かなではようやくこれが現実なのだと実感し始めた。
陸と咲夜と蓮、かなでの四人で連絡を取るために作ったメッセージアプリのグループ。そのトーク画面に、受かった! と一言報告すると、すぐに既読の文字がつく。
おめでとう、と三人からもお祝いの言葉をもらい、舞い上がるかなでの元に、一件のメッセージが届く。
それは、陸からだった。
『合格おめでとう。なるはすごく頑張ってたから、結果に繋がって本当によかった』
グループのメッセージでもお祝いしてくれたのに、個人のメッセージまで送ってきてくれるなんて、あまりにも優しすぎる。
感極まってスクリーンショットを撮ろうとすると、そのまま追加でメッセージが送られてくる。
『大事な話があるんだけど、聞いてくれる?』
かなではもちろん、と返信をして、お守りを取り出す。
好きな人、と書かれた四つ折りの紙。
陸曰く、受験が終わってからしようと思っていた話の、ちょっとだけの欠片。
全然意味は分からないが、悪い話ではないと思う、という陸の言葉を信じている。
予定を聞かれ、今日でも明日でもいつでも! と返信すると、陸は今日がいいと答えた。
急な予定になってしまったが、かなでは慌ててかわいい私服を引っ張り出して、出かけることにした。
かなでの家の近くまで陸が迎えに来てくれたので、一緒に電車に乗って移動する。
会ってすぐに合格記念に抱きついていい!? と訊ねると、陸はなにそれ、と笑いながらも頷いてくれた。
ぎゅーっと思い切り抱きついて、陸から元気をもらう。
頑張ったね、と背中をぽんぽんと叩いてくれたから、それだけで一年分くらいの元気が補充された気がした。
合格の知らせと合格記念ハグが相まって、かなでは上機嫌だった。
そもそも陸とのお出かけというだけでもかなでにとっては特別なのだ。
にこにこしながら「どこに向かってるの?」と訊ねると、「内緒」と言われてしまう。
「とは言ってもそんなにちゃんとしたところではないけど」
「ちゃんとした?」
「うん、デートスポットみたいな?」
陸からそんな単語が出てくると思っていなかったので、かなでの頰は赤く染まる。
そんなかなでを見て、真っ赤、と陸が笑う。でもその響きにはバカにしているような色は含まれていなくて、胸の奥がきゅん、と鳴いた。
デートスポットって言ったけど、冗談だよね?
かなでが心の中で呟くと、降車駅に着いたらしい。陸がかなでの手を取り、駅のホームへと降り立つ。
あまりにも自然に手をさらわれてしまったものだから、心臓がうるさくてたまらない。
「な、なんか今日の陸くん、いつもと違う……」
ときめきすぎて死んじゃいそう。
そんな言葉はギリギリ飲み込んで、かなでが訴えかけると、やけに大人っぽい顔で陸は笑った。