「行くよな?」
「こんな日に見に行ってどうするのよ」
「君と見たいから、それじゃだめか」
空は黒い雲で覆われていた。
そんな日に、桜を見に行く?
もう散るから?
「別に散ってからでも少しは咲いてるでしょ」
そう言って手を振りほどいた。
今じゃなきゃだめな理由は?
「俺が覚悟を決めたんだ」
「なんの」
「いいから行くぞ、もう少しで晴れになる」
振りほどいたはずの彼の手は、また私を掴んでいる。
「天気予報は確かに晴れだったけど、降ってるのは雨よ、雨が見えないの?」
確かに私には雨が降っているのが分かっていた。