「ごめん、遅れた」
彼が来る頃には、周りはもう暗くなってしまっていた。
夕方の待ち合わせだったのに。
「遅い、私を待たせてなんのつもり?そっちから誘っておいて……って、なんでそんなびしょ濡れなの」
走ってきた彼は、傘を持たずにやってきた。
「桜が散るから、早く見に行こう」
「なんでよ、こんなに雨降ってるんだからもう帰ればいいでしょ」
「見に行かないのか」
「連絡付かないからまってたら可哀想だと思って来ただけ」
「今日じゃなきゃ、もう散っちまうだろ」
そう言って彼は、私の手を掴んで引っ張った。
「わかったから、離して」