「私も詳しくは聞かないと分かんないけど、でも契約したから絶対って関係はないわよ」
「そうなの⁈」
「契約すれば力は二倍の威力を発揮するし、互いに悪くはない話だけど。でも大事なのは、妖が選んだってことに価値があることよ」
「どうゆうこと?」
妖が選ぶことに価値がある??
エリの言っている意味がいまいち分からなかった。
「本来繋ぎの相手は人間側が決めてるじゃない?そうなると必然的に妖の出る膜が劣るというか。だから、妖側から意見が出ると凄く貴重なのよ」
妖は数もまだまだ少ない。
だからそこ、そんな彼らの発言力は人間側が提示した意見よりも遥かに価値が上がる言うわけか。
つまり元々決められた繋ぎの相手も、妖の気分次第でどうにでも変えられると。
「昔、妖達はこの地に降りかかる多くの災いから、国を救ったとも言われているの。彼らの存在は貴重で、人間と共存していたとはいえ、互いに結ばれることを良しとしなかったらしいわ」
「え?じゃあ昔は妖が人間と結婚することがなかったということ?」
初めて聞いた事実に衝撃を受けた。
自分が生まれた時には既に、妖という先祖返りは繋ぎとなる人間を娶ると聞かされていたから。でも実際、エリ達が妖と契約を結んだのも数十年前からだと考えれば辻褄は合う。
「昔は地位も権力も妖側にあったの。だからって人間が見下されていた訳ではないわ。彼らは神のような存在だから」
「ええ、ですから人間側は、そんな神秘的な彼らの血には己の血を混ぜてはならないと定めていたのですよ」
なるほど…。
つまりは妖の持つ強大な力に人間の血が混ざれば、生まれてくる子供は純血でなく半血。
そうなった時、妖本来の力が半分に薄れ、後の時代に響いてしまう危険性を人間達が恐れていたということか。
あくまでも妖は妖としての力を。
力を一ミリたりとも欠けさせることなく、強い子孫を多く繫栄させた方が都合がいいという訳であるが。
だがここで疑問が生まれた。
「あれ?じゃあ、なんで繋ぎは生まれたのかな?」
その考えが基本なら、今だって妖と人間は結婚することができない関係。神のような妖達の血が薄れてしまう行為を気にする我が国の方針が、ここにきて機転を大きく進路変更させたのは一体何の為か。
「確かに。そう言われてみれば不思議ね」
「ね?今までは血が混ざることを避けてきた筈なのに、なんか可笑しいでしょ?」
いきなり繋ぎを妖が娶り始めるだなんて。
妖の血が薄れてもいい理由が、過去の世界であったとでもいうのか。
「妖が後釜となる子孫を宿し始めたのも人間と結婚ができたからでしょ?でもなんか話が急過ぎない?」
「う~ん…確かにねぇ。そんなこと今まで一度も考えてこなかったなぁ。でもよくよく考えたら可笑しな話ね」
エリは意味深そうに難しい顔をして首を捻ってた。
「私は生まれた時から繋ぎに選ばれていたの。契約内容も後釜を残す為としか聞かされてこなかったから、深く追求してこなかったなぁ」
「そっか…」
「獅門、アンタ何か知ってたりする?」
エリは視線を自分の斜め後ろに立ったまま控える、獅門へと向けた。
「すいません、俺もそこまで詳しくは。っていうか、お嬢に知らない事を分家の俺が知ってるとお思いっすか?」
どうやら獅門さんにも詳しい事情は分からないようだ。
それにしても不思議だ。
何故、昔は双方に結婚概念がなかったというのに、今では逆に繋ぎを娶ることが許されるようになったのか。
でも本当に繋ぎは後釜を残すのが目的なのか?
何かもっと深刻な…別の目的が隠れてるような気がしてならなかった。
「もお!肝心な時に限ってアンタは使えないのね」
エリはぷんすか怒りながら、獅門さんの足をげしげしと蹴っていた。
「いたた、お嬢、暴力反対っす!そんなんだから友達ができないんすよ」
「おだまり!友達ならツムがいるじゃないの」
「でも紬さんが友達になる前は、一人もいなかったじゃないっすか」
「え?そうなの?エリ」
以外な真実に私はビックリした。
明るい彼女の性格なら、友達なんて沢山できるだろうに。
「し、仕方ないじゃない…ウチの存在は外部には秘密だったし。変につけいる隙を与えたら駄目って、お父様からもきつく言われてたんだもの」
エリはしょんぼりと机にうなだれてしまった。
彼女にも自覚はあったようだ。
私は宥めるようにその頭をポンポンと撫でてやった。
「ねえ、エリはどうして私と友達になってくれたの?」
そこまで家が厳しいなら中学でも友達は作らないと。
そう彼女の中で決めていたとしても可笑しくはない話なのに。
「…特別だから」
「…え?」
微かに聞こえてきた言葉に、私はそっと耳を傾けた。
「ツムは…皆とはどこか違って見えたの。だから安心して話しかけてもいいのかなって。そう初めて思えた相手がツムだったの」
彼女はうなだれた顔をあげれば、私を見つめた。
その吸い込まれそうな瞳に思わず目を見開く。
「これが第六感って奴?内永家は昔から感性が鋭いから。でも私はツムが友達で良かったと思ってる」
「エリ…うん、私もだよ!最初エリが繋ぎだって知った時はビックリしたけど。でも話してくれて嬉しかった」
エリも大変な思いをしてきたんだな。
名家であり、繋ぎともなれば辛くて当然か。
誰を信頼していいのか、誰が味方なのか。
正直それを見極めるのはとても勇気がいるだろうし。
私だって、きっと同じ立場なら怖いと思う。
これを一人で頑張ってきたんだ。
「エリ、これからもずっと友達でいよう」
私にできることがあるなら力になりたい。
こうしてエリの事を初めて知れたのも何かのご縁だ。
やっぱり出会えて、エリと友達になれて良かった。
「いや~ん!ツム、可愛い、大好き!!」
エリは嬉しそうに顔を輝かせると私に抱きついてきた。
顔はすっかりいつものエリだ。
「良かったっすね、お嬢」
その様子に獅門さんも嬉しそうにしていた。
「そうなの⁈」
「契約すれば力は二倍の威力を発揮するし、互いに悪くはない話だけど。でも大事なのは、妖が選んだってことに価値があることよ」
「どうゆうこと?」
妖が選ぶことに価値がある??
エリの言っている意味がいまいち分からなかった。
「本来繋ぎの相手は人間側が決めてるじゃない?そうなると必然的に妖の出る膜が劣るというか。だから、妖側から意見が出ると凄く貴重なのよ」
妖は数もまだまだ少ない。
だからそこ、そんな彼らの発言力は人間側が提示した意見よりも遥かに価値が上がる言うわけか。
つまり元々決められた繋ぎの相手も、妖の気分次第でどうにでも変えられると。
「昔、妖達はこの地に降りかかる多くの災いから、国を救ったとも言われているの。彼らの存在は貴重で、人間と共存していたとはいえ、互いに結ばれることを良しとしなかったらしいわ」
「え?じゃあ昔は妖が人間と結婚することがなかったということ?」
初めて聞いた事実に衝撃を受けた。
自分が生まれた時には既に、妖という先祖返りは繋ぎとなる人間を娶ると聞かされていたから。でも実際、エリ達が妖と契約を結んだのも数十年前からだと考えれば辻褄は合う。
「昔は地位も権力も妖側にあったの。だからって人間が見下されていた訳ではないわ。彼らは神のような存在だから」
「ええ、ですから人間側は、そんな神秘的な彼らの血には己の血を混ぜてはならないと定めていたのですよ」
なるほど…。
つまりは妖の持つ強大な力に人間の血が混ざれば、生まれてくる子供は純血でなく半血。
そうなった時、妖本来の力が半分に薄れ、後の時代に響いてしまう危険性を人間達が恐れていたということか。
あくまでも妖は妖としての力を。
力を一ミリたりとも欠けさせることなく、強い子孫を多く繫栄させた方が都合がいいという訳であるが。
だがここで疑問が生まれた。
「あれ?じゃあ、なんで繋ぎは生まれたのかな?」
その考えが基本なら、今だって妖と人間は結婚することができない関係。神のような妖達の血が薄れてしまう行為を気にする我が国の方針が、ここにきて機転を大きく進路変更させたのは一体何の為か。
「確かに。そう言われてみれば不思議ね」
「ね?今までは血が混ざることを避けてきた筈なのに、なんか可笑しいでしょ?」
いきなり繋ぎを妖が娶り始めるだなんて。
妖の血が薄れてもいい理由が、過去の世界であったとでもいうのか。
「妖が後釜となる子孫を宿し始めたのも人間と結婚ができたからでしょ?でもなんか話が急過ぎない?」
「う~ん…確かにねぇ。そんなこと今まで一度も考えてこなかったなぁ。でもよくよく考えたら可笑しな話ね」
エリは意味深そうに難しい顔をして首を捻ってた。
「私は生まれた時から繋ぎに選ばれていたの。契約内容も後釜を残す為としか聞かされてこなかったから、深く追求してこなかったなぁ」
「そっか…」
「獅門、アンタ何か知ってたりする?」
エリは視線を自分の斜め後ろに立ったまま控える、獅門へと向けた。
「すいません、俺もそこまで詳しくは。っていうか、お嬢に知らない事を分家の俺が知ってるとお思いっすか?」
どうやら獅門さんにも詳しい事情は分からないようだ。
それにしても不思議だ。
何故、昔は双方に結婚概念がなかったというのに、今では逆に繋ぎを娶ることが許されるようになったのか。
でも本当に繋ぎは後釜を残すのが目的なのか?
何かもっと深刻な…別の目的が隠れてるような気がしてならなかった。
「もお!肝心な時に限ってアンタは使えないのね」
エリはぷんすか怒りながら、獅門さんの足をげしげしと蹴っていた。
「いたた、お嬢、暴力反対っす!そんなんだから友達ができないんすよ」
「おだまり!友達ならツムがいるじゃないの」
「でも紬さんが友達になる前は、一人もいなかったじゃないっすか」
「え?そうなの?エリ」
以外な真実に私はビックリした。
明るい彼女の性格なら、友達なんて沢山できるだろうに。
「し、仕方ないじゃない…ウチの存在は外部には秘密だったし。変につけいる隙を与えたら駄目って、お父様からもきつく言われてたんだもの」
エリはしょんぼりと机にうなだれてしまった。
彼女にも自覚はあったようだ。
私は宥めるようにその頭をポンポンと撫でてやった。
「ねえ、エリはどうして私と友達になってくれたの?」
そこまで家が厳しいなら中学でも友達は作らないと。
そう彼女の中で決めていたとしても可笑しくはない話なのに。
「…特別だから」
「…え?」
微かに聞こえてきた言葉に、私はそっと耳を傾けた。
「ツムは…皆とはどこか違って見えたの。だから安心して話しかけてもいいのかなって。そう初めて思えた相手がツムだったの」
彼女はうなだれた顔をあげれば、私を見つめた。
その吸い込まれそうな瞳に思わず目を見開く。
「これが第六感って奴?内永家は昔から感性が鋭いから。でも私はツムが友達で良かったと思ってる」
「エリ…うん、私もだよ!最初エリが繋ぎだって知った時はビックリしたけど。でも話してくれて嬉しかった」
エリも大変な思いをしてきたんだな。
名家であり、繋ぎともなれば辛くて当然か。
誰を信頼していいのか、誰が味方なのか。
正直それを見極めるのはとても勇気がいるだろうし。
私だって、きっと同じ立場なら怖いと思う。
これを一人で頑張ってきたんだ。
「エリ、これからもずっと友達でいよう」
私にできることがあるなら力になりたい。
こうしてエリの事を初めて知れたのも何かのご縁だ。
やっぱり出会えて、エリと友達になれて良かった。
「いや~ん!ツム、可愛い、大好き!!」
エリは嬉しそうに顔を輝かせると私に抱きついてきた。
顔はすっかりいつものエリだ。
「良かったっすね、お嬢」
その様子に獅門さんも嬉しそうにしていた。