ーーキーンコーンカーンコーン♪

放課後のチャイムが鳴り響く廊下を歩く。
「信じていたのに…」
伴侶なんて関係ない、ずっと一緒にいたいって言って欲しかった。
そんな思いが強いせいかショックが大きかった。
「あ、おかえりツム!」
教室に入れば親友のエリが声をかけてきた。
周りは既に帰ったのか人はほぼいなかった。
おぼつかない足取りで席につく私を、エリが心配そうに駆け寄ってくる。
「ちょ、どうしたのよ⁈顔が死んでるわよ??」
私を見たエリは顔をギョッとさせた。
「そ、そうかな?」
必死に誤魔化そうと笑顔を取り繕ろうも、エリには筒向けのようで心配そうに顔を覗き込んでくる。
「…もしかして、アイツに何かされた?」
エリの怒った顔を見つめ、私はフルフルと首を横に振った。すると隣の教室からは男子の集団に混ざって真吾が出てくるのが確認できた。
今は受験シーズン真っ只中。
中学三年生ともなれば部活を引退後、塾に通う者も増えてくる。かく言う彼もその一人だった。
「別に何もされてない。代わりに別れて欲しいとは言われたけど」
「なんですって⁈その話、詳しく!!」
私は渋々さっきまでの出来事をエリに話して聞かせた。
「ふ~ん…ちょっとアイツ締めてくる」
全てを聞き終えたエリは真顔で立ち上がると教室を出ていこうとする。
「ちょ、ちょっとストップ!落ち着いてエリ!」
私は慌ててそれを引き止めればエリを椅子に座らせた。
「それだけはホントにやめて」
「だってこんなのあんまりじゃない!何が繋ぎに選ばれたから別れて欲しいよ!!」
わなわなと怒り越しのエリに私も溜息をついた。
「仕方ないよ…彼の言う通り、繋ぎに選ばれた以上は拒否権なんてないだろうし」
それだけ人間が妖に娶られるとは光栄なことなのだ。
日本に限られた数しか存在しない。
百年に一度、彼らは先祖返りを起こせば国にとって多くの利益を齎すとされる。生きていても早々お目にかかれる機会はなく、とても貴重な存在なのだ。
だが繋ぎになれば家には幸運を招き、妖も自身の血を来世に残せる絶好のチャンスだ。
人間ならば誰もが望む地位。
「人間ならまずこんな機会を棒には振らない。だって今後の幸せが約束されたようなものだよ?彼らに気に入られさえすれば、それだけで利益向上にも繋がる」
「…真吾は昔からの幼馴染で仲が良かったの」
「うん」
「だからこそ、ツムを紹介してって頼まれた時も真吾になら安心して預けられるって。そう思っていたのに」
「うん」
「なのに何でよ!!」
エリは悔しそうに机を叩いた。
エリと真吾は幼馴染だった。
家も近くて保育園からずっと一緒で。
中学入学後も楽しげに話す様子は何度か見かけることもあった。私もエリを友達になってからは、自然と真吾とも話す仲になって。後に彼から告白された時も、エリの幼馴染だし特に心配はしていなかった。