「おー!いらっしゃい!」
カランコロン、と木製のドアを開けると、元気が通常運転の叔母さんが手を振った。
「店長、ちょっとお邪魔します」
「どうしたの?…え、この子澪の彼氏?」
「違うよ、何というか…」
茜くんは店内をきょろきょろと見渡している。少し個性的なものが多いからだろうか。
そして、茜くんは私達の様子に気付き、
「はじめまして!俺、澪の友達の晴明茜です!澪の紹介でお邪魔させていただきます!」
と、にこっと微笑みながら言った。
この笑顔は、はじめましての人も、何度も会っている人も、きっとみんなを虜にさせる。
いわゆる、王子スマイルの茜くんバージョンだ。
太陽スマイルとでも名付けたい、この元気であたたかな笑顔に、やはり叔母さんも自然と顔がほころんでいる。
「茜くん!はじめまして、私は澪の叔母です。見ての通り雑貨屋をやってるんだけど、ごちゃごちゃしててごめんねー」
「いえいえ!なんか俺、綺麗に整ってるよりもこういう方が好きなんで」
叔母さんは、ぱぁぁ、という効果音をつけたいほどに、茜くんを「なんていい子なの」という眼差しで見つめている。
「茜くん!!これからも澪を、何卒よろしくお願いします!!澪!!茜くんのこと、大事にしなよ!!」
「茜くんのこと何だと思ってるの、店長…」
私はそう言って、また笑っている茜くんの顔を少し微笑んで見てみた。

ゆっくり話すならここがいい、と私の叔母が経営している雑貨屋に来てしまったが、間違った選択だったかもしれない。
雑貨たちは「早く俺たちを買うかおもしろい話をしてくれ」という圧を出してきているし、店長はおしゃべりだし。
そんなところだけど、私の通学路のちょうど中間地点にある、晴れの日の休憩スポットなのだ。
「二人とも、麦茶かほうじ茶かジャスミン、どれがいい?」
「「ジャスミンで」」
まさかの茜くんがジャスミンティーを飲むなんて。私は、これがギャップというものなのか、と思い知らされる。
「はい、アイスのジャスミンねー。ごめんね、こんなのしかなくて」
ジャスミンティーが運ばれてきた。おまけに二つチョコレートが付いている。
「ありがとうございます!迷惑かけて申し訳ないです」
茜くんはそう言うと、早速ジャスミンティーを飲んだ。
ガラスのコップ一面に水滴がついている。ぽた、と一滴落ちる。
あ、雨がほしい…。そう思ってしまった。
「ん?」
私が茜くんを見つめていたことに気付かれ、
「あ、なんでもないよ」
と言うと、またまた笑われた。