茜。とてもいい名前だ。
しかも、同い年だと少し親近感がわくな、と思った。
だが、やはり気になる。
今は普通だけれど、どうして昨日茜くんはあんなに苦しそうにしていたのだろうか。
私は居ても立っても居られなくなり、茜くんにこう言った。
「あの、昨日大丈夫でしたか…?辛そうにしてたから…」
すると、「あー…」と少し濁った声を出して言った。
「俺、少し変わった体質でさ、雨に当たると具合悪くなっちゃうんだよね」
それって…。
まさか?
「も、もしかしてそれって、まだ名前がなくて、曖昧なものですか」
「そ、そうなんだよ!それでさ、まだ医者も解明できてないって言ってて」
「そう!それ!!先天的な体質で、自分が症状を起こす逆のものを求めてしまう」
「だよな!?…え、てかなんで知ってんの?」
私は同じ体質を持つ人と会えた嬉しさで、いつもより1トーン高い声で言った。
「…実は私も、それなんです」
茜くんは、ぽかんと口を開けている。
「…え、まじ?」
「本当です」
「だって、日本にまだ数人しかいないんだぞ?あり得る?こんなこと」
確かに、この体質の人は日本に数人しかいない。圧倒的に少ない体質なのだ。
なのにそれが、今、同じ場所で、同じように息を吸って、同じように話している。
これはもう完全に…。
「だから、奇跡なんですよ!!」
「ぶはっ」
茜くんは、快晴のように明るい声で、とてつもなく笑っていた。自分では、何がそんなに可笑しいのかわからない。
「あ、茜くん…?」
「あはは!!はぁー、やべー、まじでおもれー…」
「何が…?」
私が戸惑っていると、茜くんはさらに笑い始める。
ふはは、ははは、と、途切れたかと思うとまた笑いが出てきて、茜くんはほぼずっとヘラヘラしている状態だ。
「澪が真面目すぎて」
「そんな真面目かな…?」
「いや、それ」
茜くんは、私の制服を指す。
「この制服って、この地域のトップ中学だろ」
「あ…」
私の中学校は、私が運動ができないならせめて勉強を、と思って入学した、県で上位に入る偏差値の高い学校だ。
「俺なんて、逆に超バカ学校だもん」
「いや、そんな…」
「ま、そういうことじゃないんだけど」
「え!?」
結局どういうことなの…!?と、私はおどおどしていたけれど、そういうところだってば、とまた笑われてしまった。
少しして、茜くんは
「なんかもっと色々話したいけど、ここじゃあな…」
と呟いた。
私は、そんな茜くんにいい案を思いついた。
「あ、ゆっくり話すならここがいいよ」
そう言って、私はある画像を見せた。