『こんにちは。昨日は暑さ酷かったですが、今日は曇ってていい感じ。昨日といえば、すごい濃い内容の日だったので、あまり影響されないことを願います…。みなさんも、充実した日になりますように』
今日も、学校から帰ってきてすぐにSNSの投稿をする。
昨日は、あの男の子に水を渡した後、急に恥ずかしくなって猛ダッシュで帰ってきてしまった。
それから、お母さんに何があったか伝えると、両親揃ってこっぴどく𠮟られた。
ママは行かない方がいいと止めたんだろう、とか、雨が降らなかったらどうなっていたと思ってるの、とか、日付を回っても続く説教に、終盤は耐え切れずほぼ寝落ち状態だった。
一人っ子だからなのか、私の親は愛が重いが故に過保護すぎる一面がある。
一人っ子の親が誰しもそういうわけではないだろうけど。
それになかなか反発できない私は、今日もお気に入りの場所へ行く。
絶対無理はしないので、どうかお許しください、と土下座して、なんとか家を出た。

今日は曇りなので、いつもよりかは辛くない。
昨日よりも速く階段を上って、屋上につながるドアを開けようとした。
が、よく見てみると、また今日も隙間が空いていた。いよいよ古さに負けてきてしまったのだろうか。
今日も蝶番が元気よく挨拶をしてくれた。
と、思った。
「あ、昨日の!やっと来た!」
どうやら、元気よく挨拶したのは、蝶番だけではないらしい。
「…昨日の、人…?」
昨日より元気というか明るいというか、まるで太陽みたいだ。
にこっとした笑顔がまぶしい。私と真反対。
「…ひっ!」
「あ、ごめん。びっくりした?」
急に、私の手を上向きにした。そして、手のひらをよく見つめている。
「…やっぱり」
「え、な、何ですか…?」
「ここ」
男の子が指を差したのは、昨日私が手すりに捕まった時できたすりきずだった。
「どっかですっただろ」
「な、何でわかったんですか」
「昨日水くれた時に見えたから。でも、しっかり洗ってあんだな。錆とか残ってなくてよかったわ」
そう言って、まだ微かに痛むすりきずのところに、絆創膏を貼ってくれた。
早くよくなれ、というように、男の子は、絆創膏を貼った上から、ぽんぽんと二回優しく叩いた。
「ありがたいことしてもらったし、そのお返し!こんなことしか俺できねーからさ」
「あ、ありがとうございます」
してもらったことはとっても嬉しいんだけど…。
「…すみません、それで一体、あなたはどなた様…」
「あ、そうだよな!忘れてたわ。俺、晴明茜(はるあきあかね)。中三」
「茜、くん?私は、青雲澪(あおぐもみお)です。茜くんと同じ、中学三年生です」