「澪!俺、どうしても気になって来ちゃったわ!」
「え、え!?」
「で、何?こいつらが澪を悩ませてるやつなの?」
だめだよ茜、と言おうとすると、担任の先生が
「なんて口の悪い…!!青雲さんとどういう仲なのかは知らないけれど、今すぐ教室を出てください!!」
と茜に叫んだ。
「キーキーうるせーな、近距離で言わないでくれます?鼓膜破れそうで怖いんですけど」
「程度というものがわからないのか!!出ていけと言っているだろう!!」
茜は、余裕な顔をして先生からの注意を難なくかわしている。
まさか、茜っていつも学校でこうだったりして…。
それ以上考えるのはやめておこうと思った。
「それで、俺はこんなやりとりをしに来たんじゃないんすよ」
ひと段落ついた時、茜が真面目に言った。はぁ?と、担任の先生がムカムカとした口調でつぶやいた。
「俺が澪と会ったのはつい最近のことで、まだ知らないこともあるけど、同じ仲間として言いたいことがあります」
「仲間…?」
先生たちは、突然だったが茜の話を聞いてくれるようだった。
「俺は、澪と同じ体質を持ってます。ただ、俺は雨がだめな方なんです。そんな中苦しんでた俺を、澪は助けてくれた。数少ない症状なのは、わかりますよね」
「…何が言いたいんだ」
「勝手に人の限度を決めつけないでください」
私は、茜が本当に真剣な瞳でそう言ってくれたことが、泣きたくなった。
「やってみよう、って、あくまで提案じゃないですか。なのに、それを何回も言うって、強制になってきてません?…偉そうに言っちゃうけど、俺はそれが大人として恥ずかしくないのかな、って思います」
先生たちは何も言わず、眉間にしわを寄せている。
「しかも『教師』って立場、それができてないとか一番やばいんじゃないですか?生徒に寄り添ってるって言えないでしょ。学校のために名門高校に行かせようとしてんのがバレバレだって、そう思われてもおかしくなくなりますよ」
「茜、もういいよ」
すると、強がっている茜の着ぐるみが剝がれ落ちたように、茜からも涙が溢れ出てきた。
「俺がよくない!!俺だって!!何度も言われた!!何度も嗤われた!!頑張ってるのに、できなかった…!!雨が怖くて、外に出たくない日もあった!!もう嫌だ、なんで俺はこうなのかって毎日のように考えた!!本当に辛いだけだった!!先天的なもんかもしれない!!精神的なもんかもしれない!!どこから生まれたのかわかんない症状と、俺らは戦ってんだよ!!」
そうか。茜も、私と同じだったのかもしれない。
お互い、普段は取り繕っているだけで。
「だからせめて…。もう、やめてくれよ…」
弱々しくつぶやいた茜の言葉は、今までの本当の茜が言った助けを求めるような声だった。
そうして、先生たちはようやく、少しだけ私たちのことをわかろうとしてくれたみたいだ。
「…わかりました。わかったから、二人とも職員室に来なさい」
その後、茜は教頭先生に酷く𠮟られた。
が、その後の顔はすがすがしかった。
「茜、ありがとう。本当にありがとうね」
「こっちこそありがとう。やっぱり、昨日の澪が気になっちゃってさ。澪のクラスの人探して、校舎入って早く行ってきてあげてって言われたわ。それで、ずっと盗み聞きしてた。ごめんな。やー、スッキリした!」
茜は、いつもの何倍もみずみずしい笑顔で、私の方を見た。
「俺がずっと言いたくて我慢してたこと、言わせてくれてありがとう」
私たちは、晴れやかな気持ちで通学路を歩いた。
今日やっつけた敵より、まだまだ強い敵がたくさんいる。
まだ、小さな一歩だけれど。
同じ弱さを持っているって、どんなに強いものか。
それこそ、無限大だと思った。
お天気雨の空には、微かに虹が浮かんでいるように見えた。
「え、え!?」
「で、何?こいつらが澪を悩ませてるやつなの?」
だめだよ茜、と言おうとすると、担任の先生が
「なんて口の悪い…!!青雲さんとどういう仲なのかは知らないけれど、今すぐ教室を出てください!!」
と茜に叫んだ。
「キーキーうるせーな、近距離で言わないでくれます?鼓膜破れそうで怖いんですけど」
「程度というものがわからないのか!!出ていけと言っているだろう!!」
茜は、余裕な顔をして先生からの注意を難なくかわしている。
まさか、茜っていつも学校でこうだったりして…。
それ以上考えるのはやめておこうと思った。
「それで、俺はこんなやりとりをしに来たんじゃないんすよ」
ひと段落ついた時、茜が真面目に言った。はぁ?と、担任の先生がムカムカとした口調でつぶやいた。
「俺が澪と会ったのはつい最近のことで、まだ知らないこともあるけど、同じ仲間として言いたいことがあります」
「仲間…?」
先生たちは、突然だったが茜の話を聞いてくれるようだった。
「俺は、澪と同じ体質を持ってます。ただ、俺は雨がだめな方なんです。そんな中苦しんでた俺を、澪は助けてくれた。数少ない症状なのは、わかりますよね」
「…何が言いたいんだ」
「勝手に人の限度を決めつけないでください」
私は、茜が本当に真剣な瞳でそう言ってくれたことが、泣きたくなった。
「やってみよう、って、あくまで提案じゃないですか。なのに、それを何回も言うって、強制になってきてません?…偉そうに言っちゃうけど、俺はそれが大人として恥ずかしくないのかな、って思います」
先生たちは何も言わず、眉間にしわを寄せている。
「しかも『教師』って立場、それができてないとか一番やばいんじゃないですか?生徒に寄り添ってるって言えないでしょ。学校のために名門高校に行かせようとしてんのがバレバレだって、そう思われてもおかしくなくなりますよ」
「茜、もういいよ」
すると、強がっている茜の着ぐるみが剝がれ落ちたように、茜からも涙が溢れ出てきた。
「俺がよくない!!俺だって!!何度も言われた!!何度も嗤われた!!頑張ってるのに、できなかった…!!雨が怖くて、外に出たくない日もあった!!もう嫌だ、なんで俺はこうなのかって毎日のように考えた!!本当に辛いだけだった!!先天的なもんかもしれない!!精神的なもんかもしれない!!どこから生まれたのかわかんない症状と、俺らは戦ってんだよ!!」
そうか。茜も、私と同じだったのかもしれない。
お互い、普段は取り繕っているだけで。
「だからせめて…。もう、やめてくれよ…」
弱々しくつぶやいた茜の言葉は、今までの本当の茜が言った助けを求めるような声だった。
そうして、先生たちはようやく、少しだけ私たちのことをわかろうとしてくれたみたいだ。
「…わかりました。わかったから、二人とも職員室に来なさい」
その後、茜は教頭先生に酷く𠮟られた。
が、その後の顔はすがすがしかった。
「茜、ありがとう。本当にありがとうね」
「こっちこそありがとう。やっぱり、昨日の澪が気になっちゃってさ。澪のクラスの人探して、校舎入って早く行ってきてあげてって言われたわ。それで、ずっと盗み聞きしてた。ごめんな。やー、スッキリした!」
茜は、いつもの何倍もみずみずしい笑顔で、私の方を見た。
「俺がずっと言いたくて我慢してたこと、言わせてくれてありがとう」
私たちは、晴れやかな気持ちで通学路を歩いた。
今日やっつけた敵より、まだまだ強い敵がたくさんいる。
まだ、小さな一歩だけれど。
同じ弱さを持っているって、どんなに強いものか。
それこそ、無限大だと思った。
お天気雨の空には、微かに虹が浮かんでいるように見えた。