「まだ中学三年生。可能性は無限大だ。その体質だって、克服できるかもしれないだろ」
「私も、そう思います。青雲さんは努力家で、諦めずに頑張れるからね。そう思ったからこの話を持ち掛けてみたんですよ」
まだ若いから、可能性は無限にある。
私の大嫌いな言葉だった。
可能性は無限大だから、諦めずにやっていけば必ず大丈夫だよ、とか。
君たちが思っている以上に、君たちには可能性が広がるチャンスがこれからたくさん待っているんだよ、とか。
自分はもうあれだけど、まだ若いお前たちは可能性に満ち溢れているんだよ、とか。
全部あてにならなかった。
どうして、私たち若者一人ひとりができなかったことを、全部「可能性」でくくるのだろうか。
私は、いくら頑張っても無理だった。
強い日差しの中立ち続けてみても、半袖を着て散歩がてら耐性をつけてみようとしても、あたたかな晴れの日にピクニックをしてみても、どれも三十分も持たずに倒れてしまった。
何度も繰り返した。繰り返そうとした。
けれど、その成果が実感できた日は一度もなかった。
いくら若くたって、未来があったって、本当にできないものはできない。
それをどうして、わかっていてもやらせてくるのだろうか。
それで、努力してほしいと思っているのだろうか。
大間違いだ。
「…無理です」
「そう言わないで。一度やってみるだけでも、成績がつけられるものも少なくはあるけれどあるから」
「お断りします!!」
大きな声が、教室の壁に反響した。
先生たちは、驚きのあまり固まっていた。
「私にとって、その『一度』がどれだけ辛いか!!苦しいか!!可能性なんて、これにはないって何度思わされてきたか、考えてください!!あなたたちが思っている以上に、私の世界は辛い!!」
涙がじわじわと目に染みていくのがわかった。
「私は、ずっと事実を言ってきているじゃないですか!!今と同じように、一度だけ体育をやってみようって言われて、私が倒れたことを覚えていらっしゃらないんですか!!なのにそうやって、どうして無理なのに言ってくるんですか!!もう、疲れた…!」
病気という分類にすれば、こんなことにはならないのかもしれない。
本当に残酷な考え方をしてしまった。
それで私は、我に返った。
「…本当にすみません」
すると、担任の先生が口を開いた。
「…いいえ。青雲さん。あなたが本当に太陽の光が辛いのはわかる。小学校の書類が引き継ぎで渡されて、初めて見た時はびっくりしたよ。でも、教室に日差しが入ってくる時でさえも、うずくまるような仕草をしていて、本当なんだってわかった」
先生のその優しさが、今だけ信じられなかった。
「でもね、医者にもわからないものが、私たち教師にわかるわけがないの」
「それはお前らがわかるわけないって決めつけてるからだろ!!」
ガラガラ、と勢いよく戸が開き、そこには茜が立っていた。
「だ、誰!?」
「茜…!」
「誰だ!!…その制服、ここの生徒じゃないな。許可なく他校の生徒が勝手に入ることは禁止されているはずだろう!!出ていけ!!」