今日は朝から雨がひどい。
真っ黒な雲が私たちを見下ろしていて、地面を削るような大粒の雨がばちばちと音を立てて水しぶきを散らばせている。
なんて良い日なのだろうか。
私は傘を差さずに家を出た。最高の気分だった。
髪も肌も、雨を速いスピードで吸収し、いざという時のために備える。
雨がこの身体全身にいきわたっていく感覚が、なんとも気持ちよかった。
あっという間に放課後になり、私は担任の先生と共に教室で体育の先生を待つ。
雨は朝よりもっと勢いを増し、ゴロゴロと遠くで雷鳴が響く音が聴こえた。
すると、担任の先生が口を開いた。
「…今日は、青雲さんにとっていい日ですか」
唐突にそんなことを訊いてくるので少々驚いたが、私は落ち着いて
「そうですね。雨が降るほど、嬉しいです」
と、窓を見ながら言った。
窓に映る私の顔は複雑だったが、そこには獲物を狙ったような、雨に対して奥でギラギラ光る瞳が見えた。
担任の先生は、私を不思議そうに見た。この人の言っている意味がわからない、と思っているのだろう。
本当なんだけどな。
私はただでさえ、雨を浴びたくてしょうがないのに。
「遅くなりました」
ガラガラ、と戸が開き、体育の先生が教室に入ってきた。
「早速だが、話を始めるぞ」
「はい」
体育の先生は、教卓に手をついて話し始めた。
「結論から言うと、まず外で行う体育の授業の評価がつけられません。わかると思うけど、お前の体質だからだ。ただ、体育館で行う授業は評価ができます」
「はい」
「青雲は、ほかの教科の成績はほとんど良いものだと聞いている。体育のことを除けば、お前の志望校に行ける可能性はほぼ確定になるだろうな。だが、その青雲の体質を受け入れる学校があるかが問題なんだ」
それは、先生方が私の体質を受け入れない学校があるということを考えているのですか。
そうは言えなかった。
「…はい。ですがそれは」
「待ちなさい。質問は一度話を聞いてからにしろ」
「…わかりました」
手を強く握った。ぴり、と鈍い痛みが走った。
「先生たちはお前に期待をしている。だからこそ、お前を志望校に行かせてやりたくて考えたことがあるんだ。青雲」
真剣な顔と先生の着ている蛍光色のスポーツウェアは、全く似合っていなかった。
「二学期から、外の体育の授業を受けてみないか」
その言葉は、酷く滑稽だった。
今更何を言っているんだろう。この人は。
私の先天的な体質をわかって言っているのだとしたら、本当に意味がわからない。
真っ黒な雲が私たちを見下ろしていて、地面を削るような大粒の雨がばちばちと音を立てて水しぶきを散らばせている。
なんて良い日なのだろうか。
私は傘を差さずに家を出た。最高の気分だった。
髪も肌も、雨を速いスピードで吸収し、いざという時のために備える。
雨がこの身体全身にいきわたっていく感覚が、なんとも気持ちよかった。
あっという間に放課後になり、私は担任の先生と共に教室で体育の先生を待つ。
雨は朝よりもっと勢いを増し、ゴロゴロと遠くで雷鳴が響く音が聴こえた。
すると、担任の先生が口を開いた。
「…今日は、青雲さんにとっていい日ですか」
唐突にそんなことを訊いてくるので少々驚いたが、私は落ち着いて
「そうですね。雨が降るほど、嬉しいです」
と、窓を見ながら言った。
窓に映る私の顔は複雑だったが、そこには獲物を狙ったような、雨に対して奥でギラギラ光る瞳が見えた。
担任の先生は、私を不思議そうに見た。この人の言っている意味がわからない、と思っているのだろう。
本当なんだけどな。
私はただでさえ、雨を浴びたくてしょうがないのに。
「遅くなりました」
ガラガラ、と戸が開き、体育の先生が教室に入ってきた。
「早速だが、話を始めるぞ」
「はい」
体育の先生は、教卓に手をついて話し始めた。
「結論から言うと、まず外で行う体育の授業の評価がつけられません。わかると思うけど、お前の体質だからだ。ただ、体育館で行う授業は評価ができます」
「はい」
「青雲は、ほかの教科の成績はほとんど良いものだと聞いている。体育のことを除けば、お前の志望校に行ける可能性はほぼ確定になるだろうな。だが、その青雲の体質を受け入れる学校があるかが問題なんだ」
それは、先生方が私の体質を受け入れない学校があるということを考えているのですか。
そうは言えなかった。
「…はい。ですがそれは」
「待ちなさい。質問は一度話を聞いてからにしろ」
「…わかりました」
手を強く握った。ぴり、と鈍い痛みが走った。
「先生たちはお前に期待をしている。だからこそ、お前を志望校に行かせてやりたくて考えたことがあるんだ。青雲」
真剣な顔と先生の着ている蛍光色のスポーツウェアは、全く似合っていなかった。
「二学期から、外の体育の授業を受けてみないか」
その言葉は、酷く滑稽だった。
今更何を言っているんだろう。この人は。
私の先天的な体質をわかって言っているのだとしたら、本当に意味がわからない。