『こんにちは!今日は気温がものすごく高くて、しかも太陽もピカピカ光ってて、外へ出てみたところ案の定ふらふら。同じ症状の人はわかると思うんだけど、多分外出て間もなく倒れます(にこっ)。雨を待とう!気を付けてね!!』
SNSにそうつぶやくと、十五分待ってやっと一ついいねが押された。さらに三分待つと、いいねを押してくれた方からのコメントが入った。
『あまくもさん、こんにちは!今日は、六月にしては真夏のような天気ですね。私も気を付けます!あまくもさんも、どうか無理なさらず!』
「…いつもの人だ」
嬉しさで、少し頬が緩んだ。すぐ返信し、制服の上にUVカットのカーディガンを羽織って、フードを被った。
「お母さん、私ちょっと行ってくるね」
「ちょっとちょっとちょっと、今日はやめなさい!こんなに日が照ってるんだから、いくらカーディガン着てても…」
「大丈夫。日傘も持っていくし、もちろん水も持った」
できるだけの対策はしているのに、お母さんの口からは何とかこの子を引き留めなければ、という意思が丸聞こえだ。
私はため息をつき、
「…これから、少し雨雲が通り過ぎるんだって」
と、お天気アプリの画面を見せた。
「それでもね、(みお)。今日はあなたにとって一番危ない日なの、わかってるでしょ?」
「うん。だから、大丈夫なんだって。これで倒れても、しっかり私が責任取るから。じゃあね」
「そういう問題じゃな…って、ねえ!!もう、すぐ戻ってきてよ!?」
すぐ戻ってくるよ、と言って、私はいつもの場所へ向かった。

息を切らしながら、ものすごい勢いであふれ出る汗すらも拭かず、ただ必死に廃れた階段を上った。
家を出る時にはまだ凍っていたペットボトルは解けきる寸前で、冷蔵庫に入れておいた方はもう生ぬるくなっていた。
もう少し。大丈夫、ここまで来れたんだから。あとは同じ動作を繰り返すだけだ。
右足を前に、次に左足を前に、また右足を前に…。
途端に、目の前がチカチカと、白い線香花火のようなもので染まった。
足の力が抜け、ぐらりと落ちそうになったものの、なんとか自我を保ち、手すりに強く捕まった。
手と手すりの間で燃えたような摩擦が起き、目をこすってその手を見ると、錆が手のひらに軽くめり込み、すりきずとなっていた。
この感覚は、いつぶりだろうか。
私はあまりにもの辛さに耐えられず、うずくまるようにしゃがんだ。
すると、あの時の記憶が脳を埋めつくした。