ベーコンエッグ、サバ、サラダ、玄米ご飯、ヨーグルト、バナナにパイナップル。
とても贅沢にきれいに盛り付けられている朝ごはんは初めて目にした明里。
「おいしそう……」
「おいしいわよ。コーヒーがいい? 牛乳がいい? それともお茶?」
「コーヒーでお願いします」
「ブラック? それとも……」
「砂糖とミルクを」
「かしこまりました」
 至れり尽くせりの状況に明里はますます混乱する。頬もつねった。これは夢なのか、いや痛いから夢ではなさそうだと目の前の朝ごはんを食べ始めた。コーヒーを持ってきてくれた李仁。
 明里はこういう朝があこがれだった。今日は仕事はない。休みの日は彼氏にこんなことをして欲しい、そんな理想な朝……。

 だが
「明里ちゃん」
「は、はい」
「あなた、隙だらけなのよ」
 李仁は微笑みながら言う。目は笑ってない。
「隙だらけだし、酒癖悪すぎ」
「……すいません」
「それに胸は大きいのはいいことだけど体のラインが締まってない」
 はっと明里はおなかの上に乗ったぜい肉、最近体重計に乗っていないことを思い出す。

「まぁ色々あるけど……恋のお悩みは昨日あなたが全部洗いざらい聞いてあげたわ。私、あなたにいいパートナーが出来るよう応援してあげる」
「えっ! いや、その……」
 明里はたじろぎながらもご飯はちゃっかり食べる。
「だって私のお店に来たのもどうにかして欲しいからでしょ?」
「……そ、そうですけども」
「私、こういうお助け大好きだから」
 明里はばっと立ち上がって
「わ、私! 李仁さんみたいにこういう料理作れるようになりたいです。花嫁修業ってやつ? お願いしますっ」
 と頭を下げると李仁はうなずいた。

「いいけども。花嫁修業より以前に自分の為に料理が作れるようにしましょう」
「は、はいっ!」
「恋もそうだけどまずは自分を愛してあげるところから。そして体も肌も整えて……」
 明里はふと横の姿見を見て自分の丸っこい体系と肌荒れの顔を見た。化粧をしていない自分の顔と言ったら何とも言えないほど疲れ切っている。

「がんばりましょうねっ」
 と李仁はハーブティーを注いでくれた。心の中で明里は
『李仁さんみたいな彼氏、じゃなくて李仁さんそのものがいいんだけどなぁ』
 と抱いていた。