「俺……俺が……」
今まで聞いたことのないような櫂晴の焦った声は、私にまで動揺を広げていく。
どうしよう。
とにかく場所を聞きたいけど、一旦荷物を取りに行く……?
今日櫂晴はレッスン予定だっけ、まだ河川敷……?
いろんな情報が駆け巡る脳内は正常ではなく、上手く道筋が掴めない。 ばくばくとなり続ける心臓に、言葉を探していると、スマホから別の声が聞こえた。
「華梛?ことだけど」
「琴音?」
櫂晴から変わった可愛らしい声も、少し震えていた。
「が……楽久が、車に轢かれた。いま、救急車待ってるんだけど、櫂晴もあんな状態で……ことと、3人しかいなくて」
ぶわっと頭から血が流れていく。
脳がひんやりしていく感覚とこめかみあたりの違和感が広がる。
「……っ、安全な場所には移動してる?」
「うん。今は歩道にいるけど、あ、救急車……」
うっすらと電話の奥から、救急車の音と叫び出す櫂晴の声が聞こえた。
俺の親友なんです、助けてください、お願いしますお願いします
その必死な声が、現場の悲惨さを想像させて、大きく震え出す手を、もう片方の手で押さえつけた。
「救急車に乗ったら行先の病院教えて、私もすぐ行くから。それまで、ふたりのことよろしくね。琴音なら大丈夫だから」
現場にいる琴音をこれ以上不安にさせないよう、無理やりしっかりとした声で伝え、電話を切った。 電話を切った途端に力が抜け、待合室で座り込んでしまう。
事故……車に轢かれたって、どういうこと、どうなるんだろう……。
櫂晴のあの焦りようからして、きっと簡単な状態じゃない。
「美雲?」
後ろから呼ばれた声に、ビクリと肩を震わせた。
琴音からの連絡を待つため、メッセージ画面を開い
たスマホを握る手は、信じられないほどがくがくと震えていた。
「あ……あ、雨宮くん……」
だめだ、しっかりしないといけないのに。
溢れ出す涙に、不安な気持ちに、私は耐えられなかった。
「楽久くんが轢かれて、救急車で運ばれて、て」
さっきまでは、取り繕えていた声もかすれていた。
雨宮くんは、それだけ聞いてその場を去り、自分と私のカバンを持ってやってきた。
「行こう、もう連絡来てる」
私の手を引いた彼にスマホ画面を見ると「小泉病院」と送られているのが確認できた。
今まで聞いたことのないような櫂晴の焦った声は、私にまで動揺を広げていく。
どうしよう。
とにかく場所を聞きたいけど、一旦荷物を取りに行く……?
今日櫂晴はレッスン予定だっけ、まだ河川敷……?
いろんな情報が駆け巡る脳内は正常ではなく、上手く道筋が掴めない。 ばくばくとなり続ける心臓に、言葉を探していると、スマホから別の声が聞こえた。
「華梛?ことだけど」
「琴音?」
櫂晴から変わった可愛らしい声も、少し震えていた。
「が……楽久が、車に轢かれた。いま、救急車待ってるんだけど、櫂晴もあんな状態で……ことと、3人しかいなくて」
ぶわっと頭から血が流れていく。
脳がひんやりしていく感覚とこめかみあたりの違和感が広がる。
「……っ、安全な場所には移動してる?」
「うん。今は歩道にいるけど、あ、救急車……」
うっすらと電話の奥から、救急車の音と叫び出す櫂晴の声が聞こえた。
俺の親友なんです、助けてください、お願いしますお願いします
その必死な声が、現場の悲惨さを想像させて、大きく震え出す手を、もう片方の手で押さえつけた。
「救急車に乗ったら行先の病院教えて、私もすぐ行くから。それまで、ふたりのことよろしくね。琴音なら大丈夫だから」
現場にいる琴音をこれ以上不安にさせないよう、無理やりしっかりとした声で伝え、電話を切った。 電話を切った途端に力が抜け、待合室で座り込んでしまう。
事故……車に轢かれたって、どういうこと、どうなるんだろう……。
櫂晴のあの焦りようからして、きっと簡単な状態じゃない。
「美雲?」
後ろから呼ばれた声に、ビクリと肩を震わせた。
琴音からの連絡を待つため、メッセージ画面を開い
たスマホを握る手は、信じられないほどがくがくと震えていた。
「あ……あ、雨宮くん……」
だめだ、しっかりしないといけないのに。
溢れ出す涙に、不安な気持ちに、私は耐えられなかった。
「楽久くんが轢かれて、救急車で運ばれて、て」
さっきまでは、取り繕えていた声もかすれていた。
雨宮くんは、それだけ聞いてその場を去り、自分と私のカバンを持ってやってきた。
「行こう、もう連絡来てる」
私の手を引いた彼にスマホ画面を見ると「小泉病院」と送られているのが確認できた。