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 神様がいるとするならば、本当にその存在は残酷だ。

 これまで必死の努力を続けてきた櫂晴の、大切な大切なコンテストの前に、こんなにも大きな壁で行く手を阻むのだから。

 カバンの中に片付けられていたスマホの震えが、机にまで伝わった。

 気付かないことにして、塾の講義を聞き必死にシャーペンを動かしていた。
 しばらくしても鳴りやまないその震えに、隣から視線を感じ、私は諦めて顔を上げた。

 「(出ないの?)」

 目が合った雨宮くんから、口パクでそう伝えられ、その指はカバンを指差している。

 同じ机で講義を受けていた雨宮くんにも当然その振動は伝わっていたようだった。
 両手を合わせて謝罪を伝え、カバンからスマートフォンを取り出す。

 未だに鳴り続ける着信は、櫂晴からだった。

 思わず、スマホを握る手に力が入った。

 塾の時間ということは分かっているはず、それなのにかかってきた電話に、不穏な動悸がした。

 ……今日、櫂晴は、レッスンだったっけ?

 何となく冷えていく頭を回転させながら、私は静かに席を立った。
 廊下に出て行った私を、雨宮くんはじっと見つめていた。 「はい」

 電話に出たけれど、櫂晴の声は聞こえなかった。
 雑音と車の音で、櫂晴のいる場所が外だと言うことは伝わってくる。

 「櫂晴?聞こえてる?」

 不安になり声を大きくすると、すっと息を吸う音が聞こえた。

 「華梛……俺どうしよう、俺……」

 無言の後、聞こえた櫂晴の声は震えていた。

 「どうしたの?いまどこ?」

 身体中の血管がどくりと鳴る。
 嫌な予感はさらに現実味を帯び、私は、汗の滲む手のひらでスマホを握りしめた。