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 「華梛。先行くわ」

 琴音の机で、他愛のない世間話をしていたとき、櫂晴に肩を叩かれた。

 「あ、うん!もうすぐだもんね!頑張って!」

 私が、琴音と親しくなってから、櫂晴たちの集団にも変化があった。

 「コンテストって言ってたっけ?頑張ってねー」
 「応援してっから!」

 そんな声が飛び交うのを、櫂晴は鬱陶しそうに顔を歪めた。

 「お前らに言われるのはなんかうぜーわ!」
 「なんでだよ!」
 「はー!?嬉しいくせに何言ってんの?」

 応援されて当然だ。今までがおかしかったのだ。

 私は、もみくちゃにされる櫂晴を、私は満足げに見つめていた。

 櫂晴がエントリーしているダンスコンテストがもうすぐ近くに迫っていた。

 定期的に、大会だ、イベントだと忙しそうにしていた彼だけど、今回のコンテストはいつもとはまた違うらしく、櫂晴は緊張した面持ちで練習に向かっていた。

 気になって少し調べてみたのだけど、そのコンテストは、賞を貰えればプロのダンサーの目にも止まると言われる、ダンサーたちの登竜門のようだった。

 「ねえ、櫂晴〜最近全然遊んでくれないじゃん。たまには残ってよ、今日華梛も塾休みなんだよ?」

 そんなのは関係ないというように、琴音の甘えた声が響き、私たちはみんなして琴音に注目した。

 「悪い、しばらく無理なんだよ」
 「毎日じゃん!もう、ほんとつまんない!ね!楽久!」
 「はは、だなー」

 琴音と視線を合わせて、適当に笑った楽久くん。

 また誤魔化してる……!

 目を細め、楽久くんに不満をぶつけるけれど、彼は都合が悪い視線から逃げるようにそっぽを向いた。

 楽久くんの本心を知っている私は、なんだかそれがもどかしかった。

 櫂晴にはきっと伝わっているんだと思うし、それなら外野が口を出すことではないのだけど、それでもわざわざ誤魔化す必要はないはず。