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 雨宮くんとの関係は、すっきりと収まるところへ収まった。
 だけど、櫂晴とのことは勇気が出ないまま、しばらく日が経ってしまっていた。

 「なあ、今日、河川敷」

 そんなある日。
 突然、席までやってきた櫂晴から誘われた。

 「え……?う、うん……」

 突然のことで、微妙な返ししかできなかったのだけど、それだけ言って去って行った櫂晴に後を追うように心臓が暴れ出した。

 ほんとに別れ話になったらどうしよう。

 そんな不安が沸き上がり後ろを振り返ると、音坂くんがこちらにピースサインを送っていた。

 楽観的な彼に、私はため息をこぼすことしか出来なかった。

 ……人の気も知らないで……。

 そんな私を、音坂くんは眉を下げて見守ってくれていた。

 放課後、河川敷で足を止めると、既にそこに櫂晴はいた。
 だけど、彼は踊っていなくて、ただ一人、川の方を向いて座っていた。

 「櫂晴」

 小さく名前を呼ぶと、櫂晴はゆっくりこちらを振り返る。
 少しの沈黙が流れ、私は、意を決して口を開いた。

 「「……ごめん」」

 重なり合った言葉に顔を上げる。
 目が合った櫂晴も驚いた顔をしていた。

 「なんで、華梛は悪くねーじゃん」
 「いや、だって、勝手に不安になったのは私だし、結果的に雨宮くん巻き込んじゃったし……」

 小さく呟いた私に、櫂晴は黙り込んだ。