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次の日の学校で、私は櫂晴の顔を見れないでいた。
櫂晴と直接何かがあったわけではない、だけど、心の引っかかりが大きくなってしまった今、いつも通りの笑顔を向けられる自信がなかった。
「琴音、昨日の話だけど」
「あ、うん。昨日はありがとうね」
可愛らしい琴音ちゃんの声が、なんだか今日は嫌な声に感じる。
甘えた声。そんな声で櫂晴に話しかけないで、近づかないで。
惨めな感情が積もっていって、思わず耳に手を当てた時、落ち着いた声がその会話に混ざり込んだ。
「相楽」
落ち着いているけれど、いつもよりずっと棘のある声だった。
「え、雨宮くんなんか雰囲気違くない?」
すぐにクラスが気付く程の異様な雰囲気に、七星もその声の先を振り返り、私をつつく。
私も聞き覚えのある声に驚いて目を向けると、琴音ちゃんの席の近くで、櫂晴と雨宮くんが対峙していた。
「えっと、なに?」
友好的にも見える笑顔を向けた櫂晴。
その笑顔がほんの少しだけ引きつっていることは、みんなには伝わっているのだろうか。
「ここじゃちょっと」
言葉を濁して教室を出た雨宮くんを、櫂晴は追いかけて行った。
友人たちに向けてヘラりと残して言った笑顔は、やっぱりどこか引きつっていた。
私はなんだか胸がざわざわして、思わず立ち上がりその後を追う。
二人は無言のまま、屋上へと上がって行った。
ドアが閉じられたのを確認し、私は一気に階段を駆け上がった。
ドアの向こうで、薄っすらと聞こえた声は、耳を澄ませば聞き取れる声だった。
「昨日、美雲が塾に遅れてきた」
「は?」
櫂晴は驚いているようだった。
私も同じように驚き、思わずドアを開きそうになる。
「その理由も聞いた。中途半端な付き合いをするなら、他にしろよ。美雲が傷つくのは見てられない」
「は……?どういう意味だよ」
「心当たりはあるんじゃないのか、昨日誰と一緒にいた?」
確信を突き続けるような雨宮くん。
彼のこんな強い言葉を聞くのは初めてだった。
やめて、櫂晴を責めることは言わないで。
そう思う自分もいたけれど、私の足はどうしてか動かないままだった。
ドアを開くタイミングを失いその場に立ち尽くす。
櫂晴は、何も言わなかった。
何も言わないってことは、なにかやましいことがあったということなのだろうか。
悲しみが沸き上がり、私はその場にしゃがみ込んだ。
次の日の学校で、私は櫂晴の顔を見れないでいた。
櫂晴と直接何かがあったわけではない、だけど、心の引っかかりが大きくなってしまった今、いつも通りの笑顔を向けられる自信がなかった。
「琴音、昨日の話だけど」
「あ、うん。昨日はありがとうね」
可愛らしい琴音ちゃんの声が、なんだか今日は嫌な声に感じる。
甘えた声。そんな声で櫂晴に話しかけないで、近づかないで。
惨めな感情が積もっていって、思わず耳に手を当てた時、落ち着いた声がその会話に混ざり込んだ。
「相楽」
落ち着いているけれど、いつもよりずっと棘のある声だった。
「え、雨宮くんなんか雰囲気違くない?」
すぐにクラスが気付く程の異様な雰囲気に、七星もその声の先を振り返り、私をつつく。
私も聞き覚えのある声に驚いて目を向けると、琴音ちゃんの席の近くで、櫂晴と雨宮くんが対峙していた。
「えっと、なに?」
友好的にも見える笑顔を向けた櫂晴。
その笑顔がほんの少しだけ引きつっていることは、みんなには伝わっているのだろうか。
「ここじゃちょっと」
言葉を濁して教室を出た雨宮くんを、櫂晴は追いかけて行った。
友人たちに向けてヘラりと残して言った笑顔は、やっぱりどこか引きつっていた。
私はなんだか胸がざわざわして、思わず立ち上がりその後を追う。
二人は無言のまま、屋上へと上がって行った。
ドアが閉じられたのを確認し、私は一気に階段を駆け上がった。
ドアの向こうで、薄っすらと聞こえた声は、耳を澄ませば聞き取れる声だった。
「昨日、美雲が塾に遅れてきた」
「は?」
櫂晴は驚いているようだった。
私も同じように驚き、思わずドアを開きそうになる。
「その理由も聞いた。中途半端な付き合いをするなら、他にしろよ。美雲が傷つくのは見てられない」
「は……?どういう意味だよ」
「心当たりはあるんじゃないのか、昨日誰と一緒にいた?」
確信を突き続けるような雨宮くん。
彼のこんな強い言葉を聞くのは初めてだった。
やめて、櫂晴を責めることは言わないで。
そう思う自分もいたけれど、私の足はどうしてか動かないままだった。
ドアを開くタイミングを失いその場に立ち尽くす。
櫂晴は、何も言わなかった。
何も言わないってことは、なにかやましいことがあったということなのだろうか。
悲しみが沸き上がり、私はその場にしゃがみ込んだ。