⋆*
 雨宮くんと肩を並べて校舎を出た。

 「今日って数学だよね?私、1個当てられたら困るところあって」
 「そうなの?じゃあ着いたら確認しよう」

 頼りになる彼に、私は「ありがとう」と笑いかけた。

 その雨宮くんの先に視線が移り、私は一瞬笑顔を無くす。

 校門近くにあるベンチで座っていた二人組と目が合ったのだ。
 途端にもやりと陰った心に、私は視線を逸らす。

 「華梛」

 だけど、その相手から名前を呼ばれ、私はギュッとカバンのひもを握りしめた。
 小さなベンチに二人で座る櫂晴と琴音ちゃんは、距離が近いように見えた。

 気にしすぎ?今までもこうだったっけ?

 確かにデフォルトで距離が近い人なのは間違いないし。重いって思われたくないし。
 面倒くさい彼女にもなりたいわけじゃない。

 頭をぐるぐる回る言い訳を閉じ込めて、私は口角を押し上げた。

 「塾、行ってくるね」
 「……ああ」

 返された声は、いつもより数段低く、不機嫌なように聞こえた。

 私、顔に出てた?面倒くさいって思われた?

 そんな反省の色を浮かばせながら、校舎を出て歩く。
 隣を歩いていた雨宮くんは、その様子を黙って伺っていた。