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 「華梛、行こうぜ!」

 放課後、周りを気にしない彼の良く通る声で、私達の新たな関係は知れ渡った。

 「華梛?どういうこと?」
 「いや違う、これは本当に言うタイミングが……」

 報告がなかったことに、不機嫌になり始める七星を必死でなだめながら、私は顔を赤くして声の主を睨んだ。

 「なんだよ、ほら、行こう!」
 「えっ、ちょっと……!」

 満面の笑みを浮かべ、私の手を引く櫂晴に、クラス中から悲鳴が上がった。

 「え……、櫂晴どういうこと!?」
 「まじ?あいつ美雲にまで手出したわけ?」

 良いものも悪いものも含まれるその声になんだか少し不安になる。

 「え、美雲?」

 心配をしてくれているような雨宮くんにも曖昧な笑顔を返すほかなかった。

 「華梛、また明日ね?」
 「櫂晴、浮かれんなよ」

 唯一以前から察していそうだった七星と楽久くんは、それぞれ不敵な笑みを浮かべ私達を見送る。

 「おー!じゃーな!」

 明るい櫂晴に振り回される私には、余裕の余の字もないのだけど。
 クラスでも隠さずに話しかけてくれた、その事実が嬉しくて浮かれていた。

 初めての恋、叶うはずがないと思っていた恋が、叶ったのだ。私は誰がどう見ても分かるほど、浮かれていたと思う。

 だけど私は、程なくして知ることになる。
 遊び人だと知られていた彼の、残酷な程の優しさを。