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 「お母さん。ちゃんと説明させて」

 息を吐き、呟いた言葉は落ち着いていた。

 私の声を聴いた母は、先程までとは雰囲気を変え、黙って私の言葉を待った。

 分かってくれないと、決めつけていたのは私だ。

 自分が楽だから母の言う通りに生きてきたのに、縛られているような気になって。
 選択をするのは自分なのに、言う通りなら間違いないって楽な道を選んでいただけだった。

 「私はずっと、空が好きだった。晴れの日も雨の日もいつも」
 「そうね……それは覚えてる」

 母は、感情を落ち着かせるように、静かにカップに口をつけた。

 幼稚園や小学校の帰り道、空を眺めては母に質問をしていた自分を思い出す。
 母もきっと、同じ景色を思い出していた。

 少しだけ柔らいだ空気に、私はもう一度口を開く。

 「小学校で図鑑を見て、天気の変化を観察するようになった。毎日、メモをしてた。理科を習うようになって、スマホで調べるようになって、メモの種類は増えていったの」

 私は、そっと鞄からノートを取り出した。

 もう何冊目なのか分からない。そのノートは、幼い頃から1日も欠けることなく私が続けてきた天気日記だった。

 ゆっくりとそのノートを受け取った母は、パラパラと真ん中あたりを開き、数ページめくって目を見開く。