今、送ってくれたのを見ただけではなさそうな口振りに、私は分かりやすく動揺してしまっていた。

 「何も言えないの?やっぱり勉強しているなんて嘘ね。あの子といたんでしょ、いつから付き合ってるの」

 母は、わざとらしいと思うような大きなため息をついて、こめかみに手を当てた。

 「突然無謀な夢を追いかけたいと言い出したのも、あの子の影響?ちゃんとしなさい。悪い影響を受けるような子とつるまないで。華梛は賢い子のはずよ」

 開いた口が塞がらなかった。

 違う……。
 何を見たか知らないけど見た目や偏見で決めつけられるほど、彼は簡単な男じゃない。

 櫂晴を悪く言われた瞬間に、それまで刺激しまいと押し込んでいた感情が破裂した。

 「櫂晴は関係ない。気象予報士はずっと私の夢だった。彼はそれを応援してくれただけだよ」

 急にはっきりと反抗した私にも、母はため息を零した。

 「応援?賢くない子は、叶いもしない夢を無責任に応援するの。そんなのに乗せられて自分の将来を無茶苦茶にするなんて、馬鹿げてる」

 完全に櫂晴の事を悪いように決めつけて、聞く耳を持ってくれない母に、これ以上ない憤りを覚えた。

 「違う……」

 違う、違う違う。

 櫂晴は本気で応援してくれている。無責任なんかじゃない、だって彼自身も自分の大きな夢を追いかけてるのに。

 お母さんは、何も知らないのに、どうしてそんな簡単に決めつけたことを言うの?
 なんで分かってくれないの?私の夢だって、根本から否定して。なんでそんなに……。

 感情の全てをぶちまけそうになって、ハッとした。
 今年の夏。櫂晴と親しくなる前の自分を思い出す。

 私も、お母さんと同じだった。彼のイメージだけで嫌煙していた。

 それを変えてくれたのは、紛れもなく彼自身だった。

 夢を追いかける姿、諦めないことを教えてくれたその強さ。重みのある応援の言葉。
 それを真っ直ぐぶつけてくれたから、私は彼を知ることができたのだ。

 考えてみれば、私は彼みたいに、真っ直ぐに向き合うことがなかった。

 どうせ分かってくれない。否定されたくない。
 いつだって無難な選択をしてきたのは自分だった。

 そんな状態で、伝わらないことを怒るのは、お門違いだ。