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 遅くなってしまった。もう母親は帰っているだろう。

 家まで送ってくれた彼を見送るまでは、落ち着かなかったけれど、なんだか夢見心地な温かい時間だった。
 だけど、玄関の扉を見つめるとすぐに、ひんやりとした現実へと引き戻される。

 明かりの着いているリビングを恐れながら、私は静かに玄関を開けた。

 リビングに、母はいた。
 カーテンを少し開け、外を眺める母に、不穏な違和感を感じる。
 なんとなく嫌な予感がして、私はリビングへは寄らず、直接部屋へ入ろうと顔をそむけた。

 「華梛。座りなさい」

 ピリッと張り詰めた空気に、私は息を飲んだ。
 こちらを見ずに告げた母は、かなり怒っているようだった。

 私は素直にリビングへと入り、ダイニングテーブルへ腰を下ろす。
 その正面に遅れて座った母は、険しい表情をしていた。

 「最近、帰りが遅いみたいだけど、何してるの?」

 淡々と告げる口調からも怒っていることは明白だった。

 だけど、私の帰りが遅いのは、そもそも勉強をし辛い空気を作った母のせいだ。
 それなのに私だけが怒られる事実が悔しかったけれど、既にピリついている母を刺激するのは良くないと私は落ち着いて言葉を返した。

 「外で勉強してるんだよ、集中できるから」
 「そんなのただの言い訳でしょう」

 聞く耳を持たず、強く返されて私は驚いた。

 言い訳なんかじゃ無い。勉強しているのは事実なのに、どうしてそんなふうに決めつけられるのだろう。

 そんな不満が募り、私は黙ったまま下唇を噛み締める。

 「送ってくれた子は誰?なんであんな子とこんな時間まで一緒にいるの?一緒に勉強してたとでも言うの?真面目な子には見えないけれど」

 さらに加えられた言葉に、私は耳を疑った。

 どこで見たんだろう。彼のことをどこで知ったんだろう。
 そんな疑問が頭を過る。