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遠目に聞こえる音楽と、地面を蹴る靴の音。
心地よい雑音の中で、参考書を開き、鞄の上でシャーペンを走らせる。
カラオケに行くと言った友人たちを見送り、ひとりで教室を出た櫂晴を、私はすぐに追い掛けた。
夕方の涼しい風に吹かれ、耳慣れた音の中でする勉強は、信じられないくらいに捗っていた。
「お」
バンッと、大きな音を立てて何かをキャッチした櫂晴。
音に驚いて顔を上げた私は、彼の視線を追って土手の上を見上げた。
「おつ」
そこには、カラオケに行ったはずの音坂くんが立っていた。
櫂晴に差し入れたのと同じスポーツドリンクを持って私の隣に腰を下ろす。
「あ、ありがとう……」
手渡されたそれに、私は恐る恐る手を伸ばした。
勉強している私の隣に座ったからだろうか。
ゲームを始めることも無く、ただじーっと練習する彼を眺める音坂くんに、私は考えながら口を開いた。
「今日カラオケ行ったんじゃ……?」
音坂くんは、ゆっくりこちらに視線を向けて、軽く笑った。
「2時間も行けばみんな満足でしょ」
なんでもないように呟いて、そのまま飽きずに、彼のダンスを見続ける。
その目は、目の前に出された大好きなものを見るように輝いていた。
「音坂くんって、もしかして……櫂晴の夢、めちゃくちゃ応援してる?」
直感だった。
彼が、教室で、櫂晴の夢を笑ったのを見ているし、だから彼のことは信用出来なかった。
だけど、いま目の前で見た彼からは、馬鹿にしているような感情は読み取れなくて、それどころか、本当に誇らしそうに彼の姿を見ているように思えた。
音坂くんは、驚いたようにこちらに視線を向け、みるみるうちに顔を真っ赤にした。
遠目に聞こえる音楽と、地面を蹴る靴の音。
心地よい雑音の中で、参考書を開き、鞄の上でシャーペンを走らせる。
カラオケに行くと言った友人たちを見送り、ひとりで教室を出た櫂晴を、私はすぐに追い掛けた。
夕方の涼しい風に吹かれ、耳慣れた音の中でする勉強は、信じられないくらいに捗っていた。
「お」
バンッと、大きな音を立てて何かをキャッチした櫂晴。
音に驚いて顔を上げた私は、彼の視線を追って土手の上を見上げた。
「おつ」
そこには、カラオケに行ったはずの音坂くんが立っていた。
櫂晴に差し入れたのと同じスポーツドリンクを持って私の隣に腰を下ろす。
「あ、ありがとう……」
手渡されたそれに、私は恐る恐る手を伸ばした。
勉強している私の隣に座ったからだろうか。
ゲームを始めることも無く、ただじーっと練習する彼を眺める音坂くんに、私は考えながら口を開いた。
「今日カラオケ行ったんじゃ……?」
音坂くんは、ゆっくりこちらに視線を向けて、軽く笑った。
「2時間も行けばみんな満足でしょ」
なんでもないように呟いて、そのまま飽きずに、彼のダンスを見続ける。
その目は、目の前に出された大好きなものを見るように輝いていた。
「音坂くんって、もしかして……櫂晴の夢、めちゃくちゃ応援してる?」
直感だった。
彼が、教室で、櫂晴の夢を笑ったのを見ているし、だから彼のことは信用出来なかった。
だけど、いま目の前で見た彼からは、馬鹿にしているような感情は読み取れなくて、それどころか、本当に誇らしそうに彼の姿を見ているように思えた。
音坂くんは、驚いたようにこちらに視線を向け、みるみるうちに顔を真っ赤にした。